卑猥なデイリーミッションを達成しないと死ぬらしいので奔走します
新原(あらばら)
第1話 死神
「――寿命が迫っております」
朝起きたら、枕元に黒いローブを羽織った黒髪の美少女が佇んでいた。
髑髏の仮面を頭部に斜め掛けしていて、その手には大鎌を握っている。
「……え?」
寝起きの僕は混乱した。
死神っぽいコスプレをしているその美少女にはまったく見覚えがなかったからだ。
「だ、誰……!?」
混乱に身を任せて僕は大声を轟かせた。
すると――
「――おにいどうかしたの!?」
中2の妹・
栗毛をサイドテールにしているちんまいヤツ。
制服に着替えている途中だったようで、上はブラウス、下は色気ないグレーのパンイチ状態だった。
「こ、この子お前の友達か!?」
僕は死神コスの少女を指差す。
すると――
「……へ? この子って何? 誰も居なくない……?」
!?
「おにいさぁ……寝ぼけてんの? 急に大声出しておどかさないでよね~」
そう言って依子は自分の部屋に戻っていってしまった……。
「私の姿はあなたにしか見えていないんです」
死神コスの少女はそう言った。
「ウソだ……」
「妹さんが実証してくださったじゃないですか。私は死神のアスラ。死が迫る者にのみ、私の姿は写ります」
「し、死が迫るってなんだよ……僕が死ぬって言うのか?」
「はい」
アスラと名乗った少女はこくりと頷いた。
「
「あ、ありえないよ……僕まだ16だぞ? 病気だって特に……」
「そう思いたい気持ちは分かりますが、残念ながら事実です。明日、あなたは何かしらの死因で突然死することになります。そういう運命です。理不尽ですが、死とはそういうものです。――ですが」
彼女は蜘蛛の糸でも垂らすようにこう言った。
「もし生き延びられる可能性があるのなら、あなたはそれにしがみつきたいですか?」
「あ、当たり前だろ……」
僕が明日死ぬなんて嘘くさい話だが、しかし、しかしだ……依子には実際このアスラが見えてなさそうだった。
だったら多分、アスラが超常的な存在……死神なのは本当で、その死神が僕に死が迫るというなら、その話も本当なんだろう。
そう信じざるを得ない……。
そして……死の運命を回避出来るのなら、僕はもちろんそれに縋りたい。
僕にはまだやりたいことがいっぱいある……最新のゲームアニメ漫画にもっと触れたいし、何より色恋のいの字も知らずに死ぬなんざ、未練でしかない。
「分かりました。――でしたら生にしがみつくために、性にしがみついていただきましょうか」
――【本日のお題:女性のおっぱいを1回揉め】
「!? な、なんだ今の……」
脳裏に妙なワードが浮かび上がり、直後には消えていた。
「今のがあなたに課せられた明日の生存条件――デイリーミッションです。あなたは翌日に迫る死の運命から逃れるために、これから毎日性にまつわるデイリーミッションをこなしていかなければなりません」
「ど、どういうことだよ……色々ツッコミどころはあるけど、なんで性にまつわるんだ……」
「性こそが、人間の生きる意味だからですよ」
アスラは淡々とそう言った。
「どれだけ清潔に見えるイケメンだろうと、どれだけ清楚に見える美女だろうと、その内側には色欲の獣を飼っています。この世界の芸能人を見ていれば分かることです。それだけ、人間にとって性とは切っても切り離せない本能の一種。それが生み出すエネルギーには、死の運命すらはね除ける力があります。そういうことです」
なんとなく分かるような、分からないような……。
「とにかく、あなたは今のお題をこなすことでしか生き延びることが出来ないわけです」
「……なんでそんなチャンスがあるんだ?」
「自死でない限り、人は誰しもこのチャンスを得ます。性に奔放な人間は、もしかしたらデイリーミッションのために足掻いているのかもしれませんよ?」
そんな意味深な……。
……まぁでも、とにかく……死にたくないなら足掻くしかないらしい。
今日のデイリーミッションは……【女性のおっぱいを1回揉め】だっけか。
くっ……陰キャぼっちの僕にはキツすぎる(白目)。
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