第23話 待ち人


〇月×日



今日は残念な事がおこりました。


夜目が覚めた時に、ハネダが居なかったのです。


フェンスの南京錠が開いていたので、ハネダは多分そこから出ました。


しかもペンちゃんが残してくれたお金を持って出て行ってしまいました。


これからどうしよう・・・ノベタンと2人になってしまいました。












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 走っていられずに、先程の事務所から少し離れたゴミ置き場で倒れ込んでいるハネダの姿がありました・・・・・・・



ハネダ「・・・はー・・・はー・・・・・うぅ・・・・」



 窓ガラスでかなり深く切った体からは血が止まりませんでした。かなりの出血量です。




ハネダ「・・・・う・・・・うぅ・・・・」



 涙がこぼれてきました・・・・・。




ハネダ「・・・ハク・・・・・ノベタン・・・・・。うぅ・・・・。立たなきゃ・・・・・。」



 これだけ出血して立てるはずがありません・・・・。




ハネダ「みんな・・・・・・・。・・・・・神様・・・一つだけお願いがあります・・・。」




 ハネダはゴミに囲まれながら空を見上げました。




ハネダ「ハクと・・ノベタンを守ってやって下さい・・・・・。」


 そうじゃないともう・・・守って貰わないともう・・・・俺は何も無かった人生を過ごしたことになるんです・・・・。自分が居たおやっさんの会社を廃業させたくないんです・・・・。




 俺は地獄に行きます・・・・。金を盗んだのだから喜んで地獄に行きます・・・。だから宜しくお願いします・・・・。ハイバラの組員に捕まるのではなく、ここで自分で死んで償います・・・・。許してくれとは言いません、許しを乞う事はしません・・・・・。




 良い・・・人生だったなぁ・・・・・。




 ・・・・・・・・・




 ・・・・・・・・・




 ・・・・・・・・・






〇月×日




今日は変装の為に髪の毛の色を変えてみようと思います。



お父ちゃんが私のリュックの中にヘアカラーを入れてくれていました。



自慢の黒髪をとても気にいってましたが、心機一転。似合うかなぁ。



ノベタンはどう思っているのでしょうか。男性の意見を聞きたい。








ノブハラ「なぁハク・・・。そろそろここを出ないと・・・・。」



ハク「うん・・・わかってる・・。・ハネダやっぱり帰って来ないね・・・。」



ノブハラ「ハネダが捕まって、俺達の居場所を吐いたら、俺達までやられる。」



ハク「・・・・今日外に出る予定?」




ノブハラ「・・・あぁ・・・・。」




 ハネダがここから出たという事は、ハクとノブハラの居場所を知る人間が外に出たという事です。




 でももし、1%でもハネダが帰ってくる可能性があるのなら、どうしても私はそれに賭けたかったのです。いつも一緒に居た仲間が戻って来てくれることをいつまでも信じていたいのです。



 お金はこの際どうでもいいです。ノベタンを足止めしないと・・・・。



 出る支度をしているノブハラに言いました。



ハク「ノベタン・・・・もう1日だけ・・・明日の朝まで待てないかな?」



ノブハラ「駄目だハク。もうそろそろ出ないと・・・居場所がバレる。まさかお前、バレて良いとか思ってないよな??・・・・・」



 ノブハラの言う事ももっともです。危険を覚悟でここから出ないと、居場所が突き止められる上に、大事にしていた食料も水も底を尽きそうなのです。もう殆どありませんでした。蹴って倒れなかったペットボトルも、蹴れば部屋の反対側に吹っ飛ぶくらい軽くなっていました。




ハク「私はさ・・・・まだハネダが帰ってくる可能性に賭けたいんだけど・・・・。」



ノブハラ「一晩待ったろ・・・・・帰ってくるわけがない。もしかしたら、もうどこかで死んでるかもしれない。」



ハク「・・・・・わかった・・・・じゃあ・・・さっき言ってた髪を染めてくるね・・・・。」




ノブハラ「うん、わかった。」




 私はそのまま奥の部屋で髪の毛を染め、シャワールームに入りました。




ジャーーーーーーー!!



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・・・・・・・・



ハク(・・・なんかもう・・・・・終わりなのかな・・・・・)



 ・・・・・・・・



 シャワーを終え、タオルで髪を拭きました。



 ・・・・・・・・・




 ・・・・・・・・・



 私は・・・・・・・・・・裸のまま・・・元居た部屋に直行しました・・・。





ノブハラ「ハク、お前のリュック・・・・・・・・え?!」




ハク「・・・・・・・・・・・・」



 全裸で真っすぐノブハラの方を見ています。何故かわかりませんが、全然恥ずかしくなかったです。




ノブハラ「ば・・・・馬鹿野郎!何してんだお前!!服着ろよ!!頭おかしくなったのか?!」




ハク「このまま死んでいくのは嫌だ!!ノベタン!!抱いてよ!!」




ノブハラ「正気なのかお前!!今そんな事ヤってる場合じゃないだろ!!」



ハク「私だって最後は、女の快楽を味わいたい。・・・大好きな人と一緒に。」



ノブハラ「・・・ハク・・・・。」


 私はノブハラに近寄り、自分からキスをしました。そのままソファーに引きずり込みました。



 ノブハラも少し気持ちが分かったようで、私に合わせてくれました。



 このままノベタンとの子どもが出来て、ここで暮らせたらなぁ。そんなこと出来るわけないかぁ。逃亡している身だもんね。赤ちゃんなんかここで育てられないかぁ。



 ・・・・・・・・・・・・・




 ・・・・・・・・・・・・・



 ・・・・・・・・・・・・・





 1時間後・・・・私は少し張り切り過ぎたようでソファーの上でぐったりしていました・・・。





ノブハラ「ハク・・・・なんかその・・・・順番が逆になってしまったけど・・・。」




ハク「・・・・うん?」



ノブハラ「俺はお前の事が好きだ。ずー-っと前から。なんで気付いてくれないんだ。」




ハク「そうなんだ・・・・。それを聞くことが出来てよかったぁ・・・・。」



ノブハラ「・・・・・・・・・・」


ハク「それはさっき私の方から先に言ったつもりだからね。気が合うね。」


ノブハラ「そういう所も、全部な。」






 その言葉に急激に目が合いました。




ハク「・・・・・」



 私はノブハラに抱きつきました。









〇月×日



父親譲りで人間に対して愛情表現が苦手な私は、今まで好きな人が居たとしても思いを伝える事は出来ませんでした。私の事を好きだと言ってくれた人はこれまで大勢居ましたが、私は心では受け入れていませんでした。ノブハラがそういう風に私の事を思っていてくれて良かったです。本当に生きていてよかったです。


産まれてからずっと日陰の暗い水の中で暮らしていたような私でしたが、なんだか少しだけ人間っぽくなれたような気がして、嬉しかったのです。





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