簡単な問い

それは「令和の米騒動」と呼ばれ、怒れる人々はSNSで声を上げた。
「JAが買い占めたからだ」

「いやいや、減反政策が悪いに決まってる」

「気候変動で不作が続いたからだろ」

「そうやって政府に騙されて、日本人は滅ぶんだ!」

「ちょっと、陰謀論者は黙っててよ!」


ある日、その渦の中に、ある一人が問いかけた。

「この中に、自分たちが食べるお米を作ってる人はいますか?」


水面に石を投げ込んだときのような、一瞬の沈黙。

しかし、すぐに誰かがこう言った。

「それは仕事の分業ってもんでしょ」と。


すると、別の誰かも付け足した。「だからこそ、農家さんを守らないと」


自分の食べる米を作っているのかいないのか、

それは至極簡単な問い。


しかし、それに答えた者はいなかった。


そしてタイムラインは賑やかに流れた。

その渦潮のような速い流れに、いつか世界は救われると、

誰もがそう信じ切っているかのように。

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