第40話 攻撃力も規格外かよ……。
怪物が動いた。巨体に似合わない速さで、鋭い爪がこちらに向かって振り下ろされる。空気を切り裂く音が耳元で響く。その一撃が地面に突き刺さる瞬間、僕は咄嗟に横へと跳んだ。
「くそっ、速い!」
爪の衝撃で地面がえぐれ、砂煙が舞い上がる。ほんの一瞬遅れていたら、間違いなく直撃していただろう。息を整えながら、ペンダントを握りしめる。
「頼む、間に合ってくれ!」
ペンダントが眩い光を放ち、全身を包み込む。視界が白一色になり、体が熱を持ち始める。何度経験しても、この瞬間には緊張感が伴う。だけど今は、迷っている余裕なんてない。
光が収まり、黒と銀を基調としたタイトな戦闘用スーツに身を包んだ僕が現れる。拳を握りしめると、手袋に刻まれた紋様が淡く光を放った。その光が不思議と僕に自信を与える。
「さて、やるか。」
拳を構え直し、目の前の怪物を見据える。相手は僕の変身を待つつもりはないらしく、再び爪を振り上げた。今度は横から薙ぎ払うような一撃。僕はそれを見極め、一歩下がって避ける。
「危ねぇ……!」
攻撃の余波で近くの街灯がへし折れた。想像以上の威力に冷や汗が背中を流れる。それでも、ここで引くわけにはいかない。僕は拳を強く握り直し、一気に間合いを詰めた。
「これでもくらえ!」
全身の力を込めた拳を振り下ろす。だけど、僕の攻撃は怪物の硬い外殻に弾かれた。鈍い音と共に、手元に伝わる衝撃。拳が痺れる。
「マジかよ、こんなに硬いのか……!」
怪物が低い唸り声を上げる。その目はまるで「そんな程度か」と言わんばかりだった。悔しさが胸にこみ上げる。
「くそっ、もっと強い攻撃をしないと……!」
僕は再び構え直す。相手の巨体に対して、ただ闇雲に殴りかかっても意味がない。隙を見つけて、一撃を叩き込む必要がある。
怪物は再び動き出した。今度はその翼を広げ、大きく羽ばたいて空気の流れを乱す。砂煙が視界を遮り、一瞬相手の姿を見失う。
「どこだ……?」
焦りが募る。けれど、その瞬間、ペンダントが微かに震えた。まるで相手の位置を教えてくれるように。その感覚を頼りに、僕は振り返る。
そこには、巨大な爪を振り上げた怪物がいた。その爪が迫る中、僕は咄嗟に後方へ跳び、一撃をかわす。
「よし、ここからだ!」
避けるたびに、相手の動きが少しずつ読めるようになってきた。まだ手ごたえはないけれど、戦いの中で少しずつ状況を打開する方法が見えてきている。
怪物の爪を間一髪で避けた僕は、大きく息をついた。振り下ろされた爪の衝撃で地面がえぐれ、砂煙が舞い上がる。その威力を目の当たりにして、身体が一瞬固まりそうになるのを無理やり振り払った。
「硬いだけじゃない、攻撃力も規格外かよ……。」
拳を握りしめ、冷静になろうと自分に言い聞かせる。ペンダントが淡い光を放ちながら、僕に訴えかけてくるような気がした。この戦いは避けられない。ここで倒さなければ、誰かが傷つくかもしれない。
怪物は僕の様子を見て、再びその巨大な爪を振り上げた。今度は、上からではなく横薙ぎだ。あの爪に当たれば、一撃で大怪我どころか命も危ない。僕は地面を蹴り、反射的に後方へ飛び退いた。
「まだまだ!」
足を止める暇もなく、怪物は攻撃を続けてくる。その度に僕は全力で回避を重ねるしかなかった。巨体に似合わないスピードと圧倒的な力。正直、これまでの怪物とは比べ物にならない強敵だ。
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