第39話 こいつ、今までのと全然違う

学校からの帰り道、今日はいつも通りまっすぐ家に帰ろうと思っていた。だけど、ポケットの中に忍ばせていたペンダントが微かに震え始めるのを感じ、足が止まった。


「……出たか。」


ここ最近、ペンダントが反応する頻度が増えているのは気のせいじゃない。街のどこかで怪物が生まれつつある証拠だ。嫌な予感を覚えながら、僕は周囲を見渡した。


住宅街の夕暮れ。人気が少ない路地裏をペンダントの反応を頼りに進む。震えは次第に強くなり、胸ポケットに入れたペンダントが熱を帯び始める。


「これ、今までよりも強い反応だな……。」


微かに浮かび上がるペンダントの紋様を見つめる。この反応が何を意味しているのか、最近の戦闘で嫌というほどわかってきた。出現する怪物の規模や強さは、ペンダントの反応に比例する。今日の反応は……正直、これまでのどの怪物よりも強烈だ。


「一体、どこに……?」


狭い路地を抜け、ペンダントの導くままに進むと、目の前に広がったのは空き地だった。夕暮れの光に照らされた雑草の生えた空間。その中心で、黒い霧のようなものがうごめいているのが見える。


「……これだ。」


ペンダントがさらに強く震え、まるで僕を急かすようだ。黒い霧の渦は見る見るうちにその範囲を広げ、空き地全体に広がろうとしている。その不気味さに思わず一歩後ずさる。


「まずい、早くなんとかしないと……!」


ペンダントを握りしめる。その瞬間、周囲の空気がピリッと変わった。まるで空間全体が緊張しているかのような異様な雰囲気。黒い霧の中心がまるで生き物のように動き出し、形を成していく。


「……こいつ、今までのと全然違う。」


形作られるその姿は、これまで戦ってきた怪物とは比べ物にならないほど大きい。全身が筋肉の塊のようで、表面は鎧のように固く、まるで刃物のように尖った部分が全身に張り巡らされている。背中からはコウモリのような翼が広がり、目は真っ赤に光っている。その目が僕をまっすぐ捉えた瞬間、全身に鳥肌が立った。


「なんだよこれ……。化け物すぎるだろ。」


心臓が嫌な音を立てている。これまでの怪物は怖くなかったわけじゃないけど、ここまで圧倒的な存在感を感じたのは初めてだった。


怪物が低く唸り声を上げる。その声だけで周囲の空間が揺れるような感覚を覚える。鋭い爪を持つ巨大な腕がゆっくりと動き始める。それだけで地面にひびが入った。


「これ、本当になんとかなるのか……?」


後ずさりそうになる足を無理やり踏みとどめる。ペンダントが熱を帯び、さらに強い光を放った。それがまるで「行け」と言っているように感じた。


目の前の怪物が完全に形を成し、ついにその全貌を現した。体長は3メートル以上。これまでの怪物とは明らかに格が違う。明らかに「ボス級」だ。


「……やるしかないか。」


僕は深呼吸をして、覚悟を決めた。ペンダントを強く握りしめ、変身する準備を始める。だけど、怪物が動き出す方が早かった。

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