第34話 僕はちょっとアドバイスしただけさ
準備が着々と進む中、教室には活気が満ちていた。装飾係のメンバーはカラフルな紙を切り貼りしながら、背景パネルを作っている。一方、パフォーマンス準備係は道具の手入れや練習に余念がない。司会係もスムーズに進行できるようにセリフを覚えている様子だった。
「よし、この調子なら間に合いそうだな。」
僕はクラス全体を見渡しながら、一安心していた。しかし、その矢先、田中が慌てた様子で駆け寄ってきた。
「山田、大変だ!準備してた道具が壊れちまった!」
「えっ、何が壊れたんだ?」
「パフォーマンスで使う予定のライトだよ。さっき動かしてたら、突然つかなくなって……。」
田中の顔は明らかに焦りの色が見える。僕は一瞬考え込んだ後、冷静に答えた。
「わかった、とりあえず見てみよう。」
壊れたというライトを確認すると、どうやら接触不良が原因のようだった。直せるかどうか試してみたものの、完全に動作を復旧させるには時間が足りなかった。
「これじゃ、使い物にならないな……。」
周囲からも不安そうな声が漏れ始める。ここで混乱が広がると、せっかくの準備が台無しになる。僕は深呼吸をしてから、みんなに向かって声を上げた。
「大丈夫!代わりになるアイデアを考えよう!」
その言葉に、クラスメイトたちの視線が僕に集中した。緊張感が漂う中、僕はノートを取り出してさっきの進行表を見返した。
「ライトがなくても、別の方法でパフォーマンスを引き立てられるかもしれない。例えば、装飾係が作ってる背景をもっと目立たせるとか、ナレーションで雰囲気を作るとか。」
「ナレーションか……それなら、司会係のセリフをちょっと工夫すればいけるかも!」
司会係の女子が頷きながら言う。それを聞いて、他のメンバーも次々に意見を出し始めた。
「背景にLEDライトをつければ、ちょっとした照明代わりになるんじゃない?」
「それなら、持ち運べるライトが何個かあったはず。代用できそうだよ!」
みんなの意見をまとめながら、僕は一つ一つ実現可能な案を検討していった。
「よし、じゃあLEDライトを使って、背景をもっと目立たせよう。それとナレーションを工夫して、ライトがなくても観客が楽しめるようにする。この二つを試してみよう!」
具体的なプランが決まると、クラスメイトたちの顔に少しずつ笑顔が戻ってきた。
*
放課後、全員で協力しながら新しい演出案を実行に移した。背景に取り付けたライトが綺麗に光り、ナレーションも練習の甲斐あって臨場感が増している。完成した演出を見た瞬間、みんなから拍手が湧き上がった。
「やったな!これなら大丈夫だ!」
「山田、本当にありがとう。お前がいなかったらどうなってたか……!」
友人たちからの感謝の言葉に、僕は少し照れながらも笑顔で答えた。
「みんなが頑張ったからだよ。僕はちょっとアドバイスしただけさ。」
そんな僕の言葉に、田中が肩を叩きながら言った。
「いやいや、リーダーシップってやつだよ。お前、クラスの誇りだな!」
その言葉に、僕の胸の中に少しだけ誇らしさが広がった。このイベントを通じて、クラス全体が一つになった気がする。明日の本番が楽しみだ。
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