第27話 どこから湧いてきてんの?

「あー、またかよ!」


ペンダントの震えがポケット越しに伝わった瞬間、思わず声を上げる。この反応もすっかり日常になりつつあるけど、最近はその頻度が明らかに増えている。以前は数日おきだったのに、今じゃほぼ毎日だ。


「怪物も働きすぎだろ…。俺の都合考えろよな。」


そう愚痴をこぼしながらも、ペンダントが示す方向に足を向ける。街の静けさが徐々に異質な空気に変わっていくのがわかる。路地を抜けると、やっぱりそこにあった。黒い霧が渦を巻き、その中心からまた新しい怪物が現れる。


「またお前らかよ。もう顔見飽きたっての。」


その怪物はこれまでの奴らと同じように不気味な姿をしているけど、どこかで見たことがあるような気がする。同じような形の奴を何度も倒しているせいか、既視感が強い。


「お前ら、どっかの工場で量産されてるわけ?それとも怪物組合とかある?」


怪物はもちろん何も言わず、低い唸り声を上げながらこちらを威嚇してくる。まぁ、会話できるなんて期待してないけどさ。


ペンダントを取り出し、その冷たい金属に触れると、瞬間的に震えが強まり熱が広がる。あのいつもの変身の感覚が僕を包み込む。


光が収まり、いつもの戦闘服に身を包んだ僕は、拳を軽く握りしめて怪物を睨む。


「さーて、今日もちゃちゃっと終わらせて帰るか。」


怪物がこちらに向かって突進してくる。大きな爪を振り上げたその瞬間、僕は一気に間合いを詰めた。拳を握りしめ、ペンダントが伝える力をそのまま叩き込む。


「これでもくらえ!」


拳が怪物の外殻に直撃すると、鈍い衝撃音が響く。手応えはあるけど、外殻が硬いせいでひびが少し入る程度だ。僕はすぐに間合いを取り直し、怪物を見据える。


「お前ら、倒されるだけで特に何も残らねえけど、どこから湧いてきてんの?地元産?それとも輸入?」


怪物は答えないどころか、再びその大きな体を動かして攻撃を仕掛けてくる。


「はいはい、黙って攻撃してくるだけかよ。そろそろ何か教えてくれてもいいんじゃない?」


呟きながら、僕は軽いステップでその爪をかわす。そして再び間合いを詰めると、拳に全身の力を込めた。


「これでおしまいだ!」


渾身の一撃が怪物の中心に叩き込まれる。拳が触れた瞬間、手袋の紋様が強く輝き、怪物の体が内側から崩れ始めた。断末魔のような唸り声を上げながら、怪物は黒い霧となって消え去る。


戦いが終わり、街には静寂が戻った。拳を下ろし、息を整えながら僕はその場に立ち尽くす。


「これで何回目だよ…。お前ら、一体どこから来てんだ?」


ポケットにペンダントをしまいながら、僕は独り言を呟いた。この力を手にしてから怪物を倒し続けているけど、そいつらがどこから生まれてくるのか、そしてなぜ僕が戦わなければならないのか、そんな基本的なことが何一つわからない。


「考えたって答えなんか出ねえけどな。」


家に帰る道すがら、僕は空を見上げてため息をついた。ペンダントは再び冷たく静まり返り、僕を次の戦いまで待機させているかのようだった。

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