第24話 前の俺じゃ考えられなかったな
ペンダントが解放した新しい力――それはただ強い一撃を放つだけじゃなく、スピードと防御力を短時間ながらも飛躍的に引き上げるものだった。
「これ…本当にやばいな。」
初めて使った時は、勢いに任せて振り回した感があったが、怪物を倒した今、その力がどれほど実用的かがはっきりとわかる。素早い動きで怪物の攻撃をかわしつつ、間合いを詰めて一撃を叩き込む。これまでの「拳で全てを壊す」だけの戦闘スタイルとは違い、計算や判断力が生きる戦いができるようになった。
*
それから数日、ペンダントは再び震えを見せ、何度か怪物と戦う機会が訪れた。学校生活も順調で、昼間はクラスメイトたちと談笑しながら過ごし、放課後になるとペンダントの反応に従って怪物を追う。日常と非日常が綺麗に分かれていく感覚が、不思議と心地よかった。
ある夜、広い空き地に現れた怪物は、これまで以上に厄介だった。四足で地面を這い回り、鋭い牙で攻撃してくるその動きは速く、単純な力押しでは太刀打ちできない。
「スピード勝負かよ…面倒だな。」
だが、この時にはもう、俺にはスピードを上げる「ブースト能力」があった。ペンダントが再び熱を帯び、全身に力を送る感覚が広がる。
「なら…こっちも速さで応えてやる!」
怪物が襲いかかってくる刹那、俺は体を軽く捻ってその牙を避け、すぐに拳を振り抜いた。手袋の甲に刻まれた紋様が光り、拳が怪物の肩を打ち抜く。だが、すぐさま体勢を立て直す怪物に、俺は息を呑んだ。
「タフだな…でも、この戦い方なら、勝てる。」
これまでなら、全力の一撃を狙うだけの戦闘だったが、今の俺には選択肢が増えた。素早いステップで怪物の背後に回り込み、反撃を封じながら連撃を繰り出す。その一撃一撃が確実に怪物を弱らせていくのがわかった。
「どうだ…これが今の俺だ!」
最後に拳を振り下ろすと、怪物は断末魔のような咆哮を上げ、黒い霧となって消えていった。
こうした戦闘を何度か繰り返すうちに、俺の中で確かな自信が芽生え始めた。ペンダントの力が加わったことで、単なる拳での戦い以上の戦術を使えるようになったのだ。
学校ではクラスメイトから「最近お前、いい感じだよな」と声をかけられることが増えた。それに、男子たちだけでなく女子からも「頼りになるね」と軽く話しかけられることがある。俺自身も、その変化を感じていた。
「…俺、少し変わったのかもしれねえな。」
鏡に映る自分を見ながら、小さく呟く。この力を使って、ただの男子高校生だった俺が少しずつ誰かの役に立てる存在になっている。それが嬉しくて、もっとやれることを探そうと思えるようになった。
*
ある日の戦闘では、怪物が二体同時に現れるという厳しい状況に陥った。片方を叩き潰しても、もう片方が攻撃を仕掛けてくる。
「こりゃ…さすがにちょっとしんどいな。」
だが、俺はもう怯えなかった。ペンダントが新たな力を解放してくれたからだ。防御を高めて攻撃を受け流し、スピードを上げて間合いを詰める。二体の怪物を翻弄しながら、順番に仕留めていく。
「終わりだ…!」
最後の一撃を叩き込むと、二体の怪物が黒い霧となって消えていった。その瞬間、俺は両手を広げ、少しだけ深く息を吐いた。
「こんなの、前の俺じゃ考えられなかったな。」
戦うたびに、自分の力と可能性が広がっていく。ペンダントの導きがなければ、俺はただの平凡な男子高校生のままだっただろう。
「この力、誰かを守るために使い続けてやる。」
そう呟きながら、俺は帰り道を歩き出した。これから何が待ち受けていようとも、今の俺なら乗り越えられる気がしていた。
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