第23話 これが…俺の新しい力だ!
「しぶといな…まあ、そう簡単には終わらせてくれねぇか。」
低く呟きながら拳を握り直すと、怪物が再びその巨大な腕を振り上げた。鋭い爪が空を裂き、地面を抉る音が耳をつんざく。俺は体を低く沈め、ギリギリでその攻撃をかわした。だが、次の瞬間、もう片方の腕が振り下ろされる。
「くっ!」
間一髪で後ろに飛び退くが、地面が砕け、その衝撃でバランスを崩す。怪物の赤い目が俺を見据え、次の一撃を準備しているのがわかった。まずい、このままじゃ距離を詰められず、やられる。
その時だった。ポケットの中でペンダントが震え始め、胸元に押し付けられたような熱が一気に広がった。
「なんだ…これ?」
ペンダントの震えはこれまで以上に強烈で、手袋の甲に刻まれた紋様が眩い光を放ち始める。その光は俺の全身を包み込み、力がさらに解放される感覚が伝わってきた。
「…スピードが上がる?防御も…これなら!」
具体的な説明があるわけじゃない。けれど、ペンダントが与えたこの力の使い方が、なんとなく感覚でわかった。俺はすぐさま体勢を整え、怪物の動きを睨みながら力を集中させる。
怪物が再びその長い腕を振り下ろしてきた。だが、今度は違う。俺の体が勝手に動いたかのように素早く横にステップを踏み、攻撃をかわす。
「速い…!」
その驚きは一瞬で自信に変わる。怪物が腕を引き戻すよりも早く、俺はその懐へ一気に踏み込んだ。そしてもう片方の腕が迫ってくるのを確認すると、体を捻りながら手袋の甲でそれを受け流す。
「くっそ硬ぇな…けど!」
攻撃を防いだ感触すら、今の俺には確かな手応えとして感じられる。ペンダントが解放したこの「ブースト能力」は、ただ速さを増すだけじゃない。防御力も上がり、まるで全身が強化されたかのようだ。
「終わりにしてやる…!」
拳を握りしめ、力をさらに高める。怪物がその巨体をうねらせながら反撃の態勢に入るが、俺はその動きを完全に見切っていた。踏み込みのタイミングが、まるで時間がスローになったかのようにはっきりとわかる。
「これが…俺の新しい力だ!」
渾身の一撃を放つ直前、ペンダントの光がさらに強くなり、手袋の紋様が輝きを増す。拳が怪物の胸に直撃した瞬間、爆発的な衝撃波が周囲に広がった。
怪物の巨体が大きく揺れ、その体表にひび割れが走る。だが、俺はその場で止まらず、さらに連撃を叩き込む。左右の拳を交互に繰り出し、全身を使って怪物を追い詰めていく。
「お前のその硬い体も、これだけ叩きゃ限界だろ!」
最後の一撃を胸の中心に叩き込むと、怪物は耳をつんざくような咆哮を上げ、その巨体が崩れ落ちた。
黒い霧が渦を巻きながら、怪物の残骸が消えていく。ペンダントも静かに震えを止め、光を失った。それと同時に、俺の体からもブースト能力が消えていく感覚が伝わる。
「やれやれ…一気に来るなよ、体が持たねえ。」
肩で息をしながら周囲を見回す。戦いの余韻が残る中、俺はその場に立ち尽くしていた。だが、拳を握り直すと、確かな手応えを感じる。
「この力、悪くないな。」
そう呟きながら、俺はペンダントをポケットにしまい、帰り道を歩き始めた。少し疲れたが、それでも、どこか達成感のようなものが胸に残っている。次に備えて、また準備をする必要があると感じながら、俺は夕暮れの街を歩き続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます