TS魔法少女、拳ひとつで怪物を倒して街を守る。秘密を抱えながらも仲間に認められ、家族や友人からも慕われる〜僕が魔法少女になった理由(わけ)〜
第20話 女子もお前のこと『見直した』って言ってるっぽいぜ?
第20話 女子もお前のこと『見直した』って言ってるっぽいぜ?
朝の教室、いつもと同じ喧騒の中、俺は何気なく自分の席に座りながら、ぼんやりと外を眺めていた。ふと、近くの席から何やらゴソゴソと音が聞こえる。目を向けると、机の引き出しから教科書が床に滑り落ちたのに気づかない友人がいた。
「おい、落ちてるぞ。」
俺は席を立ち、床に落ちた教科書を拾って彼に手渡した。驚いたような顔をする彼に、俺は軽く肩をすくめて言った。
「ほら、置いとけよ。」
「お、おう。ありがとな、陸。」
「別に気にすんな。」
そのやりとりが、特に大したことでもないと思っていたけれど、周囲から少しだけ視線を感じた。何だ?と思ったが、誰も何も言わない。まあ、気のせいだろう。
*
次の授業の合間、席を立つついでに黒板近くに置かれた雑巾が視界に入った。黒板消しの粉が床に散らばっていて、少し汚れている。
「…誰か掃除してくれるんだろうな。」
そう思いながらも、自分で雑巾を取って軽く拭いた。別にやらなくてもいいことだ。でもやってみると、それほど手間でもない。
「お前、なんか最近すげー動くじゃん。」
後ろから声をかけてきたのは田中だった。彼がニヤニヤしながら俺を見ている。
「いや、ただ気になっただけだって。」
「そう言っても、お前前はこんなんしなかったろ。」
俺は適当に肩をすくめてその場を流したが、田中が「でも助かるよな、そういうの」と笑いながら言ったのが、少し心に残った。
*
昼休みには、教室の端で男子たちがバスケの話で盛り上がっていた。普段なら俺はあまりそういう輪に入らないけど、今日はなんとなく近寄ってみた。
「バスケの話か?」
「おう!次の体育の時間にチーム組むんだけど、メンバー足りなくて、どうするかって話しててさ。」
「俺も入れてくれよ。運動苦手だけどな。」
冗談半分で言うと、男子たちが笑いながら「お前マジで?まあ頼むわ」と言った。いつもより気楽な空気が流れるのを感じた。
*
放課後、掃除当番のグループが雑談しながらもなかなか掃除に取り掛かれずにいるのが見えた。俺もグループに含まれていたが、普段なら誰かが始めるのを待つところだ。
「ほら、適当にやっちまうぞ。長引くの面倒だろ。」
俺が軽く言いながら掃除道具を持ち出すと、周囲もそれに続いた。「お前意外と動くじゃん」と言われながらも、手際よく掃除を終わらせた俺たちは早めに帰ることができた。
*
帰り際、田中が俺に追いついてきた。
「お前、最近本当に変わったな。」
「は?」
「いや、なんかすげー動くし、気が利くっていうかさ。クラスのやつらも、なんかお前のこと『いい奴だな』って言ってたぜ。」
「俺が?」
「そうだよ。ほら、いつもはちょっと無愛想って思われがちだったけど、最近そういうの全部ひっくり返してる感じ?」
「…別にそんなつもりねえけどな。」
そう言いつつ、俺は少しだけ気分が良かった。自分がしたことが、周囲の誰かに少しでも役に立っているなら、それでいい。田中がニヤリと笑いながらさらに言った。
「しかもな、どうやら女子もお前のこと『見直した』って言ってるっぽいぜ?」
「それはねえだろ。」
「いやいや、俺が耳にしたんだから間違いないって。まあ、お前が気軽に女子と話せるタイプじゃないのは知ってるけどさ。」
田中のからかい混じりの言葉に、俺は苦笑しながら返した。
「信じるかどうかは別として…まあ、悪くないかもな。」
夕焼けの道を歩きながら、周囲との距離が少し縮まった気がする日常を、俺は静かに噛みしめていた。
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