第14話 来いよ、この怪物野郎!

ペンダントが眩しい光を放ち、再び俺の体を包み込む。昨日感じたあの温かさと電流のような感覚が、全身に広がっていく。視界は真っ白に染まり、まるで世界が一度リセットされるような錯覚に陥る。


「またこれかよ…!」


声を上げるが、光に吸い込まれるように消えていく。次の瞬間、ペンダントから発せられた光が細い糸のようになり、俺の体を巻き始める。その糸は自ら動き出し、まるで生き物のように動きながら俺の体に新しい衣装を作り上げていく。


まず制服が淡く消え、黒と銀のタイトなスーツが現れた。全体的に機能美を意識したデザインで、上半身は黒いボディスーツのようなもので、肩から胸にかけては銀色の装飾が施されている。それはまるで盾のようであり、同時に武器の一部のような印象を与えた。


下半身はタイトな銀色のラインが入った黒いショートパンツで、脚には動きを妨げない柔軟な素材のタイツがピタリとフィットしている。ブーツは昨日のものと同じように頑丈そうで、つま先には金属製のプレートが輝いている。


「くそ…やっぱりこれか…」


両手を見下ろすと、昨日と同じ手袋が装備されていた。黒いレザー製で、拳を握るたびに力が込められていく感覚がする。その甲の部分にある光る紋様が、俺の力を無理やり引き出しているような感覚を思い出させる。


目の前に立つ怪物は、こちらを見据えながら低い唸り声を上げている。その巨大な腕がしなり、地面を裂くような音を立てた。あの少年はまだ後ろで震えている。逃げる余裕なんてどこにもない。


「行くしかねえだろ!」


俺は拳を構え、怪物に向かって全力で駆け出した。ブーツが地面を叩くたびに、全身に力がみなぎる。この姿で走ると、まるで自分が別人になったかのように軽く、そして速い。


怪物の腕が振り下ろされる。だが、その瞬間、俺の体が自然と反応していた。右手を突き出し、手袋の甲を怪物の腕に向けて突き出すと、鋭い衝撃音と共に怪物の攻撃を弾き返した。


「ふん、そっちがその気なら…!」


振り払った勢いでさらに踏み込み、左手で怪物の胸元を狙う。一瞬の隙を突き、拳を打ち込むと、怪物の体がぐらりと揺れる。その衝撃に一瞬怯んだのか、怪物は距離を取るように後退した。


少年の方を見ると、まだ怯えたまま地面に座り込んでいる。俺は振り返って彼の前に立ちふさがり、できるだけ落ち着いた声で言った。


「大丈夫だ。ここは俺が守るから、少しでも離れられるなら離れてろ!」


少年が小さく頷くのを確認し、再び怪物の方に視線を戻す。拳を構え直し、声を張り上げた。


「おい、次は俺が相手だ!来いよ、この怪物野郎!」


怪物が再び低い唸り声を上げ、腕を振り回しながらこちらに突っ込んでくる。その動きを見据えながら、俺はさらに一歩踏み出した。戦う覚悟は、すでに決まっている。

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