第4話 こんな格好で戦えってか?

ペンダントが眩しい光を放ち、俺の全身を包み込んだ。視界が白一色になり、足元から頭の先まで温かいような、でも電流が走るような奇妙な感覚が広がっていく。


「何だこれ…!」


俺は驚きの声を上げたが、声も光の中に吸い込まれるようだった。次の瞬間、ペンダントから伸びた光の糸のようなものが俺の体を包み込み、まるで勝手に服を縫い上げるかのように動き始めた。自分の体が何かに変わっていくのをはっきりと感じた。


まず、いつもの制服が淡い光に溶けるように消え去り、その代わりに現れたのは黒と銀を基調としたタイトなスーツのような衣装だった。全体的には動きやすいデザインで、上半身は黒のフィット感のあるトップスに、肩から肘にかけて銀色のアーマー状の装飾が施されている。それがまるで自分の力を増幅させるかのような印象を与えた。


「これって…」


下半身は膝上丈のショートパンツに、銀色のラインが縦に走るタイツ。そして足元にはごついけれども動きやすそうな黒いブーツが現れた。つま先には鋼鉄のような質感のプレートが付いていて、どうやらこれも武器の一部らしい。


最も目を引いたのは手元だ。両手には黒のレザー製の手袋が現れ、指先には銀色の装飾が施されている。それだけではない。手袋の甲の部分には拳を保護するかのように硬いプレートが埋め込まれており、その周囲には微かに光る紋様が描かれていた。


「これ…手袋だけど、なんかめちゃくちゃ強そうだな。」


腕を軽く動かしてみると、まるで自分の力が倍増したかのように感じられた。その感覚はすぐに確信に変わる。俺はこの手袋を使って戦うために選ばれたのだ。そう理解するのに時間はかからなかった。


さらに、腰には黒いベルトが巻かれていて、そこには銀色のバックルが付いている。ペンダントの中央にあった紋章と同じ模様が刻まれており、どうやらこれがこの装備全体を統括するキーアイテムのようだ。


「ふざけるなよ…俺がこんな格好で戦えってか?」


文句を言っても無駄だとわかっている。ペンダントが俺を変身させた時点で、俺にはもう逃げ場がない。目の前にはまだ黒い影がいるし、田中もこの空間から脱出できたとは限らない。俺がここで踏ん張らなきゃ、誰も助からない。


「仕方ねえな…やるしかない。」


拳を握ると、手袋の甲に刻まれた紋様が淡い光を放った。その光が俺に不思議な自信を与える。どうやらこの装備、俺が思っている以上に戦闘向けに作られているらしい。


黒い影が再び動き出した。ムチのようにしなる腕を俺に向けて振り下ろしてくる。その動きを見た瞬間、俺の体は自然と反応していた。両手を前に構え、手袋の甲でそのムチを弾き返す。


「くっ…意外とやれるじゃねえか!」


影の腕が跳ね返されるのを見て、俺は初めてまともに息を吐いた。どうやらこの装備はただの飾りじゃない。本当に戦える力を持っている。俺は再び拳を構え直し、影の中心に向かって一歩踏み出した。


「よし、行くぞ!」


光をまとった拳を振り下ろした瞬間、手袋が衝撃波を生み出し、黒い影を吹き飛ばした。影は悲鳴のような音を上げながら霧散していき、周囲には静寂が戻った。

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