第20話 紅蓮拳を完成させよ!!
「よし。では、紅蓮拳を打ってみよ」
「はいっ!」
翌日から、紅蓮拳を完成させるための修行が始まった。
まずはダンに指示されるまま、蜘蛛怪人との戦いで放った技を再現する龍斗は、腕から拳にかけて気力を纏っていく。
燃え上がる炎のような紅蓮の気が彼の腕を覆う中、それを見ていたダンはふむふむと唸ると共に龍斗へと言った。
「ふむ、なるほどな。問題点がわかったぞ」
「もうですか!? それで、どこが悪いんです?」
「気力の込め方じゃな。龍斗、お主は今、腕で気力を生成するイメージで強化を行っていたじゃろ?」
「う、う~ん……というより、意識してなかったかもしれないです。とりあえずパワーアップするぞ! みたいな感覚で……」
ダンの指摘に対して、気力の込め方にそこまで意識を向けていなかったことを自覚する龍斗。
そんな彼の背中をパシンと叩きながら、ダンが言う。
「それではダメじゃ。基礎修行の時のことを思い出してみよ。あの時のお主は気力の流れをしっかりと意識できていたはずじゃ」
「気力の流れ……?」
「そう……気力とは丹田で生まれ、それを全身や体の各部に流すことで肉体を強化する。つまり胴から腕へ、腕から拳へと、血液が流れるように気力を流し込むイメージを持つことが重要なのじゃ」
「なるほど……!」
確かに基礎トレーニングの時は、筋肉がしっかり作用しているかを確認するのと同時に気力の流れにも意識を向けられていたと思う。
紅蓮拳を放った時は戦闘中かつ怒りに身を任せていた部分もあって、それをすっかり忘れていた。
「流し込むイメージじゃ。それを持って、もう一度やってみよ」
「はいっ!」
ダンからのアドバイスを受けた龍斗が、改めて腕に気力を込めていく。
丹田で生み出された気力を上半身から腕へ、そこから拳へ……と、水が流れていくようなイメージを持ちながら気力を込めれば、先ほどよりも闘気は少なくなったが、より洗練された紅の輝きを右腕が放つようになる。
(これで、パンチを打てば……!!)
今までとは明らかに違う雰囲気を放つ己の右腕を見た龍斗が、標的である岩へと拳を打ち込む。
鈍く大きな音が響き、殴られた岩に亀裂が入る様を目にした彼は、手応えを感じると共に小さくガッツポーズを見せた。
「うむ、多少はマシになったな。しかし、まだまだじゃ。気力の込め方が甘いし、何より打つまで時間がかかり過ぎておる。威力の向上と技を出すまでの速度を上げることを意識しつつ、修行を続けよ」
「はい! わかりました!」
確かな達成感と明確な課題を同時に得た龍斗は、モチベーションも高く反復練習に臨む。
ダンに言われたことと気力の流れを意識しながら紅蓮拳を繰り出す彼は、ふと思ったことを師匠へと言う。
「そういえばなんですけど、蜘蛛の魔物との戦った時、師匠もすごい技出してましたよね? ほら! 手刀で相手の首をすぱぱぱ~んっ! ってやったやつ!」
「ああ、弧月双手刀のことか。あれは流石に疲れたのぉ……あのハッタリのおかげで相手が退いてくれて助かったわい」
「あれって、手刀の動きに合わせて気力をかまいたちみたいに飛ばして攻撃する技ですよね? 極めれば、気力を使った遠距離攻撃もできるようになるってことですか?」
「まあ、そうじゃな。じゃが、相当に難しいぞ? お主の紅蓮拳も相手の体を貫通するほどの気力を持つが、それを光弾や光線として放つのは肉体強化とは勝手が違うからの」
紅蓮拳が放った気力が相手の体を貫通する光景を思い出した龍斗は、まるでヒーローのトドメの光線技のようだなという感想を抱いた。
もしかしたら有り余る気力を光線として相手にぶつけられるのではないかと考えた彼であったが、気力を用いての遠距離攻撃はかなり難しいようだ。
(まあ確かに、このオーラももやもやしてるだけで触っても何ともないからな。これを圧縮して、さらに体から撃ち出しても硬さとか形を維持できるようにならなくちゃダメってことか)
そう考えると普通に難易度が高いし、今の自分では不可能に思える。
高望みはせず、一歩ずつ気力の扱いを覚えていこうと気を引き締めた龍斗が、再び修行に集中し始めた時だった。
「龍斗! ダンさん! 大変だ!!」
自分たちの名を叫びながら、リピアが息を切らせて走ってくる。
彼女の様子から何か良くないことが起きていることを悟った二人へと、リピアが言う。
「敵襲だ! 村が拓雄の軍勢に襲われてる!!」
異世界デスゲームに巻き込まれた俺はクズ参加者たちからみんなを守るために努力する~変身ヒーロー、異世界を駆ける!~ 烏丸英 @karasuma-ei
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