ダンジョンで女装して魔法少女やってる
@sefeel
第1話
高校一年の夏休み初日。
窓の外では蝉が元気よく鳴いているなか、俺はクーラーでキンキンに冷えた自室でゲームをしていた。宿題はもちろんまだやっていない。まあ初日ぐらい遊んだっていいだろう。コツコツやれば半月ぐらいで終わるだろうし。去年もそんなことを考えて、終わったの最終日の夜、というか提出日の朝だった気がするけど。さすがに今年はそこまでひどくはならないはず。俺ももう高校生だし?
身長は去年と変わってないけど。というか小学生の時から大して伸びてない。この前の身体測定で確か139とかだったはず。あと1センチ、いや9ミリあれば……焼け石に水か。
まあ人間の価値は身長で決まるわけじゃない。高校生になっても低身長童顔で、全然そうは見えなくても俺は立派な高校生だ。この間親戚同士の集まりで、小学生に年下だと間違われたけど。なんなら女顔のせいで女子小学生だと思われてたけど。しかもたぶんあの子、最後まで俺が年上だと信じてなさそうだったし。
やめよう、この記憶は掘り返しちゃいけない。ただ悲しくなるだけだ。
過去は振り返らず未来に目を向けよう。例えばそう、夏休みの予定やその後の学校生活についてとか。確か、来週は父さんの友達の家でバーベキューするんだったな。それから夏祭りに行く予定もあったな。後は単発のバイトをいくつかやって、その稼ぎでゲームと漫画とラノベを買って。
…友達と遊ぶ約束?ハハッ
なんで俺はこんな心にダメージを負わないといけないんだ。自業自得?それはそう。
そんな事を考えていたせいか、ミスってダメージを受ける。まあここからリカバリーすれば、あ……。そして表示される『GAME OVER』。悲しい。
そんな、何の変哲もない日常。
この時まで、俺はこんな日々が続いていくのだと信じて疑わなかった。
その“声”が聞こえてきたのは、ふと喉が渇いたなと、麦茶を取りに行こうとした時。
『備えよ。間もなく変革の時が訪れる。そのための力は授けた。あとは、双方の世界の選択次第』
全く知らない言葉、だけどなぜか意味はわかる未知の感覚。そして、これは現実であり事実であると、強制的に確信させられている。
普通に考えれば、空耳や白昼夢の類いにしか思えない。けれどなぜか不思議と、あの声を疑うことができない。
なんだこれは。備えろ?いきなりそんな事を言われても何のこっちゃとしか。力ってなんだ。そんなものもらった覚えないぞ。
というかそれより喉渇いたし、ついでにトイレにも行きたくなってきた。
「トイレ行って麦茶飲んでから考えよう」
さて、トイレ行ってる間に、頭の整理はついてきた。おかげで、ある変化にも気づけた。
左手の甲を見る。そこには緑色の、あざのような三角形のマークがある。さっきまでこんなマーク間違いなく無かった。状況的に考えて、あの謎の声と同時に表れたんだろう。そしてそのマークを触ると、目の前に浮遊する半透明の板が現れる。
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クラス:サモナー
LV:1
HP:F
MP:D+
STR:F
INT:E+
VIT:F
MND:E
DEX:E-
AGI:F+
ユニークスキル
【魔の盟友】
スキル
【妖魔召喚】F
【霊魔召喚】F
【獣魔召喚】F
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それは、俺がよく知るゲームの画面にそっくりだった。項目が多かったり、スキルにユニークスキルという括りがあったり差異はある。けどそれぞれの評価方法がアルファベットになっている点なんかは同じだ。これは、あの謎の声が分かりやすいように配慮してくれた結果なんだろうか。なんか趣味趣向を把握されてる感じがして、ちょっと嫌だな。
まあ分かりにくいよりはいいか。
確か、あのゲームではEランクが最低評価だった。具体的に言うと、チュートリアルで鍬を持った農民のおっさんに倒されるゴブリンが、全ステータスオールEだった。Fランクはゲームでは存在しなかったから、予測でしかないけどだいたいその半分ぐらいだろう。有志のファンの解析で、1ランク上がるごとにだいたい数値が倍に増えているらしいことがわかっている。
ゲームと現実を一緒に考えていいのかは疑問だけど、参考になるのがそれしかない。だからその考えに沿っていくと、俺は最序盤の後衛としてはそこそこ使えるけど超紙耐久という評価になる。貧弱だなあ。でも生まれてこの方殴る蹴るなんてしたことないし、運動を得意だと思ったこともない。ついでに僕は中学からずっと帰宅部だ。そう考えると、まだ後衛向きのステータスで良かったと言えるか。
ただ問題は、表示されているスキルの名前に全く覚えがないこと。あのゲームにも『サモナー』のクラスはあったけれど、使えるのは『召喚魔法』だった。名前だけ見るとあまり違いは無さそうに見えるが。ゲームみたいに説明テキストでも見られればいいんだけど。
そう思った時、ステータスが変化した
_______________
クラス:サモナー
LV:1
HP:F
MP:D+
STR:F
INT:E+
VIT:F
MND:E
DEX:E-
AGI:F+
ユニークスキル
【魔の盟友】 ▼
スキル
【妖魔召喚】F ▼
【霊魔召喚】F ▼
【獣魔召喚】F▼
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明らかに押したら何か出てきますと言わんばかりの逆三角。これはつまり、そういうことか?試しに【魔の盟友】のを押してみる。
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【魔の盟友】
魔に属するモノと心を交わし、盟友になることができる。盟友には、お互いの名に誓いながら魂の盟約を結ぶことでなることができる。
魂の盟約はこの上ない硬い繋がりである。それは従属関係ではなく対等であるがゆえに、相互に恩恵をもたらすだろう。
魔に対する親和性が上がり、魔に関する力を増強する
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大仰な言い回しでちょっと分かりにくいけど、テイムとかそういう感じのスキルっぽい。おまけに魔法関係の能力にプラス補正まで付く。MPとかINTが高いのはこれのおかげかな。相互に恩恵、は詳しいことはわからないけど、なんかバフが付くんだろう。気になるけど悪いことではないならいいか。
続いて見ていくのは3種の召喚スキル。
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【妖魔召喚】F
妖魔を召喚する力と最低限の知識をもたらす
狙った対象や一定以上の力を持つ対象を呼び出すためには魔術的契約などの強固な繋がりが必要である。
召喚の準備として、五芒星を書きその中心に血を垂らしておく。その上に手を置き、魔力を流し込みながら呼びかけることで妖魔を召喚する。
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【霊魔召喚】F
霊魔を召喚すると最低限の知識をもたらす
狙った対象や一定以上の力を持つ対象を呼び出すためには魔術的契約などの強固な繋がりが必要である。
召喚の準備として、六芒星を書きその中心に血を垂らしておく。その上に手を置き、魔力を流し込みながら呼びかけることで霊魔を召喚する。
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【獣魔召喚】F
獣魔を召喚すると最低限の知識をもたらす
狙った対象や一定以上の力を持つ対象を呼び出すためには魔術的契約などの強固な繋がりが必要である。
召喚の準備として、七芒星を書きその中心に血を垂らしておく。その上に手を置き、魔力を流し込みながら呼びかけることで獣魔を召喚する。
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とりあえず分かったこととして、ゲームの召喚魔法とは完全に別物だということ。あっちは使うと特定のモンスターが呼び出されて、召喚者の代わりに攻撃したり回復したりといったものだった。こっちは、なんとなくソシャゲのガチャみたいなイメージ。ガチャで出たキャラと契約してそれから使えるようになるみたいな。
ただ、肝心の妖魔や獣魔についての情報がない。これは実際に呼び出して確かめてみるしかないかな。
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