第2話 俺でさえ、容疑者。

「いやいや、ちょっと待ってください、意味がわかんないんですけど」

と俺は慌てて警官の方に尋ねた。

「手荒な行動では十分承知の上で行っている

早い話、昨夜、この墓を荒らしたのが、荒牧橙次郎さん、あなたという確率が非常に高いです。」

「いやだから、って聞いているんです!後君、名前は?いきなり手錠かかられてただで済むと思わんといて!」

「そうでしたね、まず名乗るのが礼儀というものなんですね、失礼いたしました。」


男はゆっくり喋ってるくせに手錠をつけるだけが早いというとんでもない警官でした。見た目はおれと変わらない30〜40代に見える、ちょっとハンサムまである警官である。悔しい。しかも手錠つけられてるし。

手錠プレイなんか、莉子ちゃんにしか許さんからって言ってやりたい!

「私は栗崎って言います、警視庁捜査一課に所属するもので、あ、こちらがIDです。」

すぅ~とポケットから手帳を出して、顔写真も名前も生年月日も目の前の男性に間違いないと見える。

って、ちょっと待って!

「栗崎って、あのもしかして…!」

「ええ、私の息子もあなたの荒牧橙弥くんと一緒の中学校に通ったということ、もうお忘れですか?」


は?え?


おいおい、ちょっと待って、もしかして3年前の橙弥の授業参観にいた噂の警官パパってまさか……!


「ってそんな思い出話に浸ってる場合じゃねぇ!

早くこの手錠を外してくれよ!」


「理由は3つあります」


「何?!」

え?3つもあんの?そんなに?


「1つ目はあなたの指紋はここの墓で見つかっている」

「おいおい警察大丈夫なのか?見つかるのは当たり前じゃないか!昨日だって手入れしてやったんだから」


思い知ったか警官共め!


「じゃーなぜ棺桶の外側もあなたの指紋もあるんですか?」


は?!?!?


「2つ目は、あなたの動機なんですが、息子のことについて、SNSにこういう投稿がありました、恐らくあなたですね」


SNSに俺が約3日前に橙弥の墓に行くのを莉子ちゃんと決めていた日の夜の嬉しさのあまり書いた投稿をそのまま見させられた。内容こうだった。


【もうすぐ会いに行くよ、橙弥!逃げるんじゃないよ!】

「あなたがそう書いたのもきっと自分の息子の死を認められずに、無理やりあなたがこの墓を掘ってまで橙弥くんに会いに行きたかったと推測できます。」


「いやいや、それこそがばかばかしいじゃねぇか!

なんでそもそも俺が墓を掘る必要があるのか?」


と流石にこれには理由は付け難いと思った矢先…


次に見せられたのが妻の莉子の2日前の夜の投稿


【橙弥に会いたい】


莉子がこんな投稿していたのか…


「あなたが奥様にしてやれることといえば、実際の息子の遺体を無理やりでも掘ってまで妻のもとに返すことで、彼女のためになると思ったからではないものですか?」


もう本当にこの警官から勘弁してほしい…

「3つ目の理由は最も具体的なので、こちらまでにご同行願います。」


仕方ないから一緒に橙弥に墓の近くまで移動した。


改めて見ると掘った形跡はちゃんと残っているが、掘った所を埋めたにしか見えないから、そもそも気づかれ難いのに、どうして警察がここが荒らされたとわかったのか?


わからないことが多すぎるんだけど…頭痛い

「こちらです、これはあなたの家のものですよね?」

「これは、うちのスコップ!なんでここにあるんだ!いや、家で確認しないと!まだ決まったわけじゃー」

「これにも、あなたの指紋がついておりますが、まだいいわけをするつもりでしょうか?」


もうなんなんマジでぇ!


完全にハメられた。

俺の庭で使えるスコップだから指紋があるのは当たり前で、

書いていた投稿とここにある物的証拠何よりの犯人説…

だけど本当にやっていない!


やっていない!神に誓って!

「話は署の方まで…」


「待ってください!」



そこに現れたのは、莉子!

救いの女神!俺を助けておくれよぉぉぉ!

「主人は確かに悪人面しておりますが、犯人には絶対にありえないんです!」


ちょっとディスってるけどナイスフォロー!

俺の語彙力が足りない分、後はお任せした、我妻よ!


「ほう、何かアリバイがあるとでも?」

そうだ莉子ちゃん!いってやって!

俺のアリバイを証明してみせよ!


「だって昨日も一昨日も3日前も3夜連続で寝かせてもらえなかったんだもの」

莉子ちゃーーーーーーーーーんんんんんんんんんんん

言っちゃダメなヤツランキングNO.2

「んん…なるほど、ですね…」

ほーら莉子ちゃん、あの変な警官も何か色々変な誤解も察してる気がするんだけど!


「なので、ここに夜に来て掘ることができませんね?それとも主人の顔が写っている具体的な映像でもあるというのですか?あるならその映像出してから主人に手錠なんかかけて下さい!」


莉子ちゃん…


「わかりました、奥様がアリバイを証人して下さるのなら手錠も外しましょう。

大変荒い行動してしまいました。」


後ちょっとで訴訟しようかと思ったよ本当に…

「ありがと~莉子ちゃん!助かった!」

「橙次郎さんは犯罪者よりも変態の顔がお似合いだわ」

俺が言いたかったやつー!

「変態でも莉子ちゃんしか見てないよー」

俺は莉子との話を終えて再び警官の方へ向かった。


「それで、俺じゃないから、誰がやったのか、他の容疑者はいないんですか?」


無理にでも探し出してやる、犯人は一体3年前に死んだ俺の息子一体何のようがあったっていうの?


「今のところは白紙に戻ったので何とも分かりません、容疑者として疑って申し訳ありません」

とお辞儀をしていた栗崎刑事がこう言い放った

「私の息子も今でも特に仲良くしていた友人の橙弥くんのことも心配しています。なんとしてでも橙弥くんを安らかに眠らせてほしいと、個人的な感情を入れすぎて、結局親御さんがやったのではないかと疑い始め、それからこんな物体的証拠が出たので、もうちょっと深入りするべきでした。

刑事として失格です」


栗崎さんにもこういった事情があったんだね…


かー」


「橙次郎さん?」

と莉子に心配そうに声かけられた

「莉子ちゃん、彼も悪気はなかったみたい、それに彼も、子の親だ、許してやれ」

「うん、許す!」

軽っ!早っ!

もうちょっと間合いあったら嬉しかったなー

「栗崎刑事、こちらが俺の連絡先です、何か進展ありましたらこちらにお電話かけてもらえませんか?」

と自分の携帯電話番号を書いた紙を刑事に渡した。

「わかりました!ご協力感謝します!」

とさらにお辞儀

「橙次郎さん、そういえば今日も島さんいなかったよ。」

え?そうなのか?全然気づかなかった。サイレンを聞いたらもう走るのに夢中で

「栗崎刑事、この墓場の管理人のご高齢の男性の方、知りませんか?俺より身長は低い親切なおじさんです。」

と改めて栗崎刑事に尋ねた


「管理人ですか?誰もいませんでしたよ?」

え?毎日ここの墓場を守る管理人がいないなんて、島さんの身に何かあったのか?


「あの、栗崎刑事、ここの管理人、島さんという方がいるんですが、毎日ここに来て居るから、何かあったと思うんですけど、捜索お願いできますか?」


「島さん、ですか?名前はなんていますか?」


………え?

そういえば俺、名前は知らないな…

「すみません、ちょっとわかりません…莉子ちゃん知ってる?」

「ううん、知らない」

と益々島さんに対して不信感を覚える。


「とにかく探してみます。また事件増えたらこちらも刑事の確保も必要になるので、島さんという方に関しての情報もありましたらお知らせします」


「ありがとうございます。」

と栗崎刑事は去っていった。


でも本当に、何が起きてるんだろう?

息子の墓は荒らされ、容疑者にもされ、島さんは消え…


「なんか、だな」

「そうだね、ちょっと不自然の点も多いけど、きっとダイジョブダイジョブ!」


出た、ダイジョブダイジョブって…

元気を無理矢理出させるために言ってくれる言葉だけど、あんまりにも合理的なさすぎるから、あんまり好きじゃない、こういう所…

莉子ちゃんなりに頑張ってるし、元気づけてほしいとわかってるけどね…

状況がその一言で何かが変わるってものじゃないから…


俺も、莉子ちゃんにダイジョブダイジョブって言わせないためにも、頑張らなくちゃ!


「そうだね、今日は動画撮影もあるから、とにかく家に帰るぞ」

「うん!」


こうして2人で墓場をあとにした。


SNS 更新のために動画を作成に育む俺たちは、午後2時までにひたすら動画を取り、ようやく編集作業が始まるところまで来た。


「やっと終わったー!後はこの動画を編集して、最高に仕上げるから!」

「う、うん!頼んだよ橙次郎さん!」

莉子ちゃん、息を切れてるな…


疲れてるね…いっぱい休んでね!マイハニー!


「さーてとテレビで何かやってるかな?」

とテレビにそこまでの興味を持っていないにもかかわらず、ポチッと開いた、そしたら次の見出しのニュースが出た。


「次のニュースです。今日未明、東京都内で飲酒運転による事故が発生しました。事故で歩行者2名が死亡、運転手の62歳男性は酒気帯び運転の疑いで逮捕されました。」


またか… 俺たちは何のために頑張ってるのか、その意味を本当に忘れちゃいけない。


尊い命がまた不本意で散って行く


「一体いつまで…」


「なお、62歳男性の容疑者は運転していないと容疑を否認しています」


まって


まって


まって


まってまってまってまってまってまって!!!


「この容疑者って…!」

莉子は隣にいて、ニュースも聞いて、映像を見たら口に両手をふさぎ、言葉を失っていた。莉子が手に持ったコップを床に落とし、中身がこぼれた。


「っ!」

俺もゾッとした。


こんなことあり得るかよ?!


「容疑者は 島信三しまのぶぞう容疑者、62歳男性 自称墓場の管理人と伝えられています。」




         次回へ続く










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2024年12月17日 18:00 毎週 火曜日 18:00

僅かでも、命取り。 グミ配達員 @Usopp8000

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