最初で最後の…

 もうずっと以前の話だ。


 いま思えば下らないことで仲違いし、それ以降しばし疎遠となっていたある友人と、私が再会するきっかけとなったのは、その彼が入院したという報せを、共通の友人から聞いたことだった。


 それゆえ後日、私は他の友人も含め計3人で、その彼の入院している病院へ見舞いに行ったのだが…まあ、すでにお互い憤りも消えていた為、普通に話す事も出来たし、また見舞いに来ると約束して、その日は別れた。


 が、結局それが私にとっては、最初で最後の見舞いとなってしまった。


 私との再会からしばし、その彼が、まだ20代の若さにも、この世を去ってしまったからだ。


 ちなみに、私たちが簡単に仲直り出来たのも、かえって私と彼が、さほど親密な仲ではなかったからかも知れない。


 そして、その所為か私は、ショックを受けつつも彼の死を冷静に受け止めることが出来た。


 ただ『最後は、息子は泣いていた』という、彼を看取った母親の言葉は、なぜかずっとこの脳裏に焼き付いていて、いまなお私を悲しませている。


 その友人の冥福を心より祈る。

 

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