第2話 冒険者になろうぜ

「くらえッ!!」


 俺は木刀を巨大なカエルに向かって突き刺した。


「ゲコッ!!」


 木刀を手から離して、右手に拳を作る。

 拳には魔力が纏いだす。


「これもくらえッ!! 『怒りの一撃ワンスパーク』!!」


 拳はカエルの顔面にぶつかり、地面に向かって叩きつけた。


 カエルと拳の間にはバリバリと電気が走る。


 そのままカエルはいい感じに焼ける。


「いよおーし、食うぞお!!」


 地面に座って、俺は手を合わせた。


「いただきまーす!!」



「ふう……食った食った」


 骨だけになったカエルを見ながら、俺はぷくり、と膨らんだお腹を触る。


 さてと、午後も修行と行きますか。


 その場で立ち上がった、その時だった。


 目の前には、


「な……ッ」


 声に出しながら驚く金髪の一人の少年が立っていた。

 見たところが同い年くらいな気がする。


「お前、そのカエル」

「食った」

「うげッ、気持ちわり」


 とても気味が悪そうな表情をする少年。


「気持ち悪くなんかないッ、俺は冒険者になるんだ、こんなご飯いつものことだ」

「へっ、冒険者になるのか。お前、冒険者がどれだけ危険な職業か知っての発言かよ?」

「ああ、知ってるよ。俺は冒険者として死ねるから光栄だ」


 ふん、と鼻で笑う少年。


「俺の名前はカイロ、十歳だ」


 この子だったのか、同い年の男の子って。


「俺はリョウだ。カイロと同じ十歳」

「リョウ? てことは、あのゴウ=ドゥーンの……」

「ああ、そうだよ。俺のこと知ってるんだね」

「当たり前だろ、有名なんだからな。まあ、顔は知らなかったけど」


 ああ、同い年の子と話すの初めてでなんだか楽しいなあ。


 気づけば、ニヤニヤしてしまった。


「うわッ、気持ち悪ッ。何ニヤニヤしてるんだよ!?」

「ひっ、ひどいなッ!!」

「冒険者ねえ……」


 俺の身体を隅々まで見るかのようにジロジロ見るカイロ。


「俺さ、将来大人になったら自由に生きたいんだよね。誰かも縛られない世界でさ」

「じゃあ、冒険者になろうぜ。俺と一緒にさ、十五歳になったら冒険者試験を受けよう!!」


 冒険者を一言で表すと『自由』だ。

 目標のためにたまには寄り道をしたり、目標を達成するのなら何をしても許される職業。


「いいね、それ。勉強も飽きてきたし、つーか、逃げてきたし」

「はは、それなら俺と同じだよ」

「へえ、お前もそうなのか」

「うん。俺は『勇者』になるんだ」


 そのためならどんなにきつい試練だって耐えられる。


 なるんだ。

 冒険者に!!


「よし、決めた。冒険者に俺もなる。なんかお前を見て俺もなりたいって思った」

「本当!?」

「ああ、本当だ。自由に行きたいからな」


 この出会いがこの先、永遠の友となることをまだ気づくはずもなかった……



 次の日──


「こう、手に魔力を集中させるんだ」

「こうって言われてもなあ……ぐぬぬッ」


 カイロは右手に拳を作った。

 が、魔力が流れてはいなかった。


「むずいなあ、お前すごいな。こんな器用なことできるのかよ」

「まあね!!」


 初めてだ。

 こうして、親父以外の人から褒められるだなんて。


 嬉しい。

 嬉しさのあまり、心臓が揺らぐ。


「『怒りの一撃ワンスパーク』!!」


 と、俺は岩に向かって拳をぶつけると、一瞬にして岩が粉々に飛び立った。


「す、すげえな!!」

「えへへっ、でしょ。魔力を纏うと拳の硬さが上がるんだ。けど、この魔法使うと身体に魔力を纏うことができなくなって、防御ができなくなっちゃうんだ」

「何言ってんのかわかんねえけど、俺も使えるようになりてえな」

「うん、カイロならなれる!!」


 こうして、修行仲間ができたのだった。

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天才冒険者の努力無双 さい @Sai31

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