俺だけミニゲームでチート能力が手に入る件
名無し
第1話
「お、ミチアキ。久々に学校来たのか。特別に誉めてやるが、これから地獄が待ってるな」
引きこもり生活を続けていた俺は、今日久し振りに学校へ来るなり、教室でいじめっ子の主犯格リュウジに絡まれたところだった。
「やっぱり、適職ってあると思うんだよ。どんなやつをいじめても満足感が得られねえ。だからよ、お前はいじめられっ子の鑑なんだよ。根っからの負け犬っていうのかな。もし今度学校を休んだら、家まで乗り込んでお前の両親を殺してやる。お前の入院中の妹も病院から引っ張り出して、目の前で犯してから滅多刺しにしてやる」
「…………」
「おい、何ジロジロ見てんだよ、虫けらのミチアキ君。お前の頭かち割って少ない脳みそ引きずり出して、グチャグチャに踏みつぶされたいのか⁉ お前なんかいつ死んでも誰一人悲しまないんだから、いつでもやってやんぞ、オイコラアッ!」
植え付けられた恐怖心で俺の体が震える。だけど、心の底から恐れることはなかった。何故なら、今の俺には抗う力があったんだ。目の前の虫けらを含めて、学校のウジ虫どもをいつでも踏みつぶせる、そんな特別な力が……。
それを手に入れたのは、つい先日のことだ。俺はいじめっ子から睨まれながら、今に至る過去を思い出していた。
金持ちでも貧乏でもないが、俺には両親と妹がいて、とても仲睦まじい家族として近所の人たちからは評判だった。
この世にはダンジョンというものが数十年ほど前から存在し、それと時を同じくして、ハンターとして覚醒する人とそうでない人に分かれるようになった。
そういうのもあって、幼少期の俺は将来ハンターになって、色んなダンジョンをクリアしてお金持ちになってやるんだって目を輝かせていたし、家族もそれに期待してくれていた。
だけど、あるときから全てが壊れた。
俺は、学校でいじめられていた子を庇ってからというもの、いじめっ子のターゲットにされて引きこもり状態になった。負の連鎖は続いて、どんなときも明るかった妹が階段から落ちて病院で寝たきりになってから、家族関係もバラバラになってしまった。
悪いことはさらに続いた。ハンターとして覚醒するかどうかは15歳までに決まるといわれるが、その誕生日から一年経っても目覚めのときが訪れることはなかったんだ。
それでも俺は、サポート役としてハンターの役に立てればと思い、食事や飲み物をダンジョンゲート前のハンターたちに届けていた。
ダンジョンゲートっていうのは、クリアしない限りは閉じることがない時空のひずみのようなものだ。そこからモンスターが出てきて人に被害を与えることもあるため、近隣のハンターには国から急遽ダンジョンの攻略依頼が出される。
また、ダンジョンにはEランクからSランクまであるといわれている。ランクはハンター協会が決め、それに応じてハンターの募集がなされるといった具合だ。
ランクが低いダンジョンほど発生しやすく危険度は低いとのこと。それでもダンジョン内はモンスターの巣窟なので油断はできない。また、ある程度進めば戻れない仕様になっているという。
子供の頃、俺はそんなダンジョンに挑むハンターを憧れの目で見ていたが、底辺のE級ハンターたちはことあるごとに俺を目の敵にしていじめていた。損な役回りばかりやらされるからと、その鬱憤晴らしだった。
「さて、死ぬか」
そんなわけで夢も希望も絶たれ、家に引きこもるしかなくなった俺は自殺を決意し、ロープを購入して自室で首を吊ろうとするが、失敗して死にきれない。
「う……?」
そのときだった。そこでノートパソコンの画面くらいの大きさの、半透明のウィンドウが目の前に表示される。
『これよりミニゲームを提示します』
「な、なんだって……?」
『一切まばたきすることなく、何かを十秒間見つめる。24時間以内にこのミニゲームをクリアすると、能力を獲得できます。できない場合、ペナルティが課せられることになりますのでご注意ください』
「…………」
嘘だろ? たったこれだけでいいのか……。俺は騙されたと思って窓を開け、空を十秒間見上げることにする。
『ノルマ完了。【神の目】を獲得しました』
そんなメッセージがウィンドウに流れてきた。【神の目】だって……?
これはなんだろうと思っていると、またしてもメッセージが表示される。
『【神の目】:対象を鑑定できるだけでなく、十秒間途切れることなく対象の死を願いながら見つめ続けるだけで、その存在を永遠に抹殺することができる』
「……」
これは、まさか……。俺はもしやと思い、【神の目】によって自分自身を鑑定してみる。
名前:
年齢:16
性別:男
ハンタータイプ:ユニーク系
腕力:F
器用:E
体力:F
敏捷:E
防御力:F
魔法力:F
精神力:C
治癒力:E
運:D
所持能力:【神の目】
まさか、本当にハンターとして覚醒していたなんて……。
ハンターには、アタックタイプ、マジシャンタイプ、タンクタイプ、ヒーラータイプという四種類があるといわれ、ユニークタイプも存在するのではと言われたことがあったが、数が希少すぎるとしてハンター協会からその存在自体を否定されたという経緯を持つ。
ハンター、それも存在さえも疑われたほどの稀なユニークタイプになることができたんだ。十秒見つめるだけで相手を始末できるなんて、強すぎる能力といえるだろう。俺は気づけば涙がとめどなく零れ落ちていた。
それも、今までのようなありふれた悔し涙じゃない。嬉し涙だった。
「アハハハハハッ!」
今この瞬間から、俺は慈悲という概念を捨てた。心を捨てた。歓喜の涙を流しながら、脳裏に浮かんだかつての自分や弱い人々を見つめながら、最後の別れの台詞を吐いた。
弱さは悪いことじゃない。愚かなことでもない。弱者にしか見えないものもある。弱者にしか救えないものもある。だから、純粋な人たちには、その心をずっと持っていてほしい。
俺は、そんな純粋な心を守るために、すべてをかなぐり捨て、あらゆる障害を取り除く鬼になってやるんだ……。
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