第17話

ある高級マンションの前で車が止まった。須田絵里香のマンションである。

矢野と須田絵里香は10年以上の親友で付き合うようになって2年が経過していた。

真来が後部座席のドアを開けると、矢野が降りて来た。

絵里香の部屋へ行く時には真来の仕事はここで終わりである。

「お疲れ様でした。明日は10時に伺います。それでは失礼します」

真来は矢野に深く頭を下げた。

「ご苦労様」

矢野は柔らかな笑顔でそう言うと、絵里香のマンションの中へと入って行った。


絵里香の寝室のベッドの中で、矢野は絵里香の裸体を抱き寄せていた。

「ねえ。新しいマネージャーの子は慣れた?」

「ああ。可愛いよ。何にでも一生懸命で」

矢野は優しく絵里香の長い髪を撫でている。

「何でそんな若い子使おうと思ったの?」

「貝原君って覚えてるか?」

「寧々ちゃんの彼だった人でしょう?凄く優秀なマネージャーだって一色がよく褒めてた。1年以上前に亡くなったのよね…… 」

「貝原君が初めて寧々のマネージャーになったのが23歳の時だった。彼に会いたくなったのかもしれない」

絵里香は黙って矢野を抱き寄せた。

「貝原君は冷静で物事に動じなかったけど、彼は結構涙脆くて感激屋だ」

「それは可愛いわね」

絵里香は笑った。

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