第7話

「あれぇ、アユ。今日は女の子とマイカー登校?」


 声をかけてきた女子生徒は、紺色のネクタイをしている。ということは、三年生だ。

 長い黒髪がさらさら揺れる、大人っぽくて綺麗な女のひとだった。


「ああ、この子、途中で拾った。うちのクラスの転校生で、千紗ちゃん」

「へぇ、転校生?」


 女のひとにのぞき込まれる。仕方なくわたしは小さく頭を下げる。

 すると女のひとがにっこり微笑んで自己紹介をはじめた。


「わたし、アユの幼なじみの梅津うめづりんっていうの。どうぞよろしくね」

「梨本千紗です」


 わたしは名前だけ告げる。

 よろしくと言われても、学年が違うひとと仲良くなるつもりはない。

 それよりさっさと、この場を離れたかった。


「では。乗せてもらってありがとうございました」


 わたしは一応お礼を言って歩き出す。


「あ、待ってよ、千紗ちゃん! おれも行く!」


 振り向いて、マスクの中で笑っている鮎川を見る。


 オレンジ色の帽子に、ちょっと着崩した制服。

 アイドルに似た顔立ちで、ほどよくチャラくて、見るからに陽キャ。

 女の子にモテそうなのは認める。

 だけどわたしにとっては、あまり近づきたくないタイプだった。


 わたしは無視してさっさと進む。


「あ、アユ、フラれた!」

「うるせー、凛! あとで覚えてろよ。おいっ、待てよー、千紗ちゃーん! 同じ教室なんだから、一緒に行こうよ!」


 登校してきた他の生徒たちが、わたしたちのことを物珍しそうに見る。


 声デカいんだよ、鮎川め。少しは遠慮しろ!


 心の中で叫んで、早足で校門に向かう。転校早々目立ちたくはない。

 そんなわたしのあとを、鮎川がわたしの名前を呼びながらついてきた。

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