第6話

「はい、着いたよ」


 わたしはハッと目を開ける。

 そして慌ててお礼を言った。


「ありがとうございました」

「どういたしまして。いってらっしゃい」


 運転席から笑いかけられ、わたしは頭を下げて車を降りる。

 鮎川もそのあとに続こうとしたら、お母さんに止められた。


「寛人! マスク、マスク!」

「あ、忘れてた」


 マスク? 風邪でもひいているのかな。昨日休んだって言ってたし。

 思い出したようにマスクをつけて、鮎川はわたしに笑いかける。


「よかった。まだ青センいないみたいだ」

「……青センって?」

「生活指導担当でうちの担任。まぁ、目ぇつけられなきゃ、怖がることはないけどさ」


 そういえば担任の先生の名前は、青山。

 見た目はごつい体育教師だったけど、転校生のわたしには親切だった。


 車が軽くクラクションを鳴らして去っていく。

 わたしがもう一度頭を下げると、すうっと近寄ってきた自転車がそばで停まった。

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