控えめだけど可愛い女の子と友達になりました。
lucky
プロローグ
新生活をスタートした人々を見守るように桜の花弁は散り始め、緑の蕾が芽吹き始める5月の初旬。月ヶ咲高校に入学してから1ヵ月が経過。クラスメイトの顔は覚え始め、新しい制服にも馴染み始めてきた。
「奏良、この後どうする?」
1日の授業が終えてからの放課後の時間。部活に向かう人と友人通しで談笑している人に別れている中で、
「図書室で課題やってく」
「明日、写させてくれ」
「全部はダメだからね」
「わかってるって」
アスリートのような体系をしており、中学は運動部に在籍していた慎吾は高校は部活よりも友達と過ごす時間を優先するみたいで、よろしくと手を振ると、親しいグループと一緒に教室を出ていった。
(今日は混みそうだから早めに行くか)
週の初めの月曜日で学校の近くの図書館は休み。僕と同じように課題をやりに行こうと考える子は多いだろうから、窓際の席を確保しておこうと鞄を背に持つと、図書室に向かった。
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
(ん……?)
無事に窓際の席を確保してからテキストとノートを取り出して課題を進めていると、周囲からひそひそ話が聞こえてきた。
「あれって女の子?」
「あんな子いたんだ」
図書室に入ってきたのは両目を覆うくらいに伸びた髪が特徴的の女の子。
(同じクラスの篠原さんじゃん。席を探しているみたいだけど)
女の子は僕と一緒で席が近くの篠原美海さんで、空いている席を探しているように、周囲を見渡しているけど、僕の隣の他は空いている席はなかった。
(僕の隣しか空いてないから)
困っている様子なので、僕は席を立つと篠原さんの所に向かった。
「僕の隣、空いてるから座っていいよ」
「い、いいの……?」
「うん。他の席、しばらく空きそうにないから」
篠原さんの手を握って自分の席の隣まで誘導する。
「お、男の子って初めて握った……」
僕も女の子の手を握るのは初めてです。周囲の視線と羞恥心で死にそう。
「あ、ありがとね……このお礼は必ず」
篠原さんは顔を紅潮させながら、席に腰かけると鞄からテキストとノートを取り出す。
(うちのおかんも髪長い方だけど前見えるのかな?)
女性にとっては髪は命と呼ばれており、篠原さんの腰まで伸ばしている長髪は両目を覆っているので、視界が確保できているのかと逆に心配になった。
(いい匂いするし……隣に女子がいるのが初めてだから集中できない)
いい香りのシャンプーの香りが漂い、綺麗な肌。中学で女子と席が近かったことはあるけど、こんなに緊張しなかったはず……。
(くっ……!! これが成長ってやつか……。恐ろしいぜ)
親父が年を取るのは辛いといっていた意味が高校生になって理解できました。今日の帰りに労いでコンビニでなんか買っていくか……。
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
『下校時刻となりました。校内に残っている生徒は帰宅の支度を始めてください』
自分の中に生まれる煩悩と戦いながら課題を進めていくが、最後の問題を解く前に無情にも帰宅を促す放送が流れ、図書室にいる生徒は徐々に数を減らしていく。
(寝る前にやるか……)
最後だけやらしてほしいと思ったけど、図書委員の視線がはよ帰れといっているので、鞄に荷物を纏めると篠原さんが呼び止めるように僕の制服の端を掴んでいた。
「あ、あの……お礼したいから……」
篠原さんは勇気を振り絞るように声を発する。
(ここで断るのは流石に……)
やり取りを見ている図書委員の皆さん(女子)は見守るようにしており、篠原さんの瞳は小動物みたいだ。
「気にしなくていいのに」
「わ、私のせいで出来なかったみたいだから……」
そら、自分の隣でそわそわしてる人がいたら集中してないって思うよね。
「の、飲み物でいいかな……?」
「あ、うん」
篠原さんは僕の後ろを付き人のように追尾し、ゲームでよく見る光景と思いながら、僕たちは学校の外にある自販機に向かった。
控えめだけど可愛い女の子と友達になりました。 lucky @purin2025
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