うちのクラスにやってきた美少女転校生の正体が、昔大きくなったら結婚しようと約束した幼馴染でした。【リメイク】
白玉ぜんざい
プロローグ 幼馴染のふたり
まどろみの中、いつものようにあの夢を見た。
『あのね、こーくん』
夢の中のわたしはいつも涙をぐっとこらえている。
気を抜けばボロボロと涙がこぼれ出ることがわかっているんだ。
けど、それはしかたのないこと。
『ん?』
その日、わたしは大好きなあの人と別れの挨拶をしていたのだから。
小学四年生のとき、わたしはパパの転勤で引っ越しをすることになった。もちろんそれに伴い、転校することになるのだけれど、わたしの中ではそれは二の次で、なによりも辛かったのは彼と別れることだった。
『わたしね、こーくんのこと、だいすきなの』
照れながら、そんな言葉を口にする。
家の前。親もいるのに、そんなのお構いなしに拙い言葉を紡いでいる。
こうして見ていると、かあっと顔が熱くなるような感覚に襲われる。
『うん。おれもゆーちゃんのこと、すきだよ』
彼はきょとんとした顔をする。
いつも思うけど、このときのわたしの気持ちはどれだけ伝わっていたんだろう。
子ども同士の好きじゃなくて、大人が言う好きだったんだけど。きっと彼はそこまで深く考えていなかったんだろうなあ。
『ほんとに? じゃあねじゃあね! ゆいとケッコンしてくれる?』
きらきらした瞳を浮かべるわたしは、まるでサンタクロースから直接プレゼントを受け取った子どものような純粋無垢で曇りのない笑顔だった。
『んー、でもケッコンっておとなにならないとできないんだろ?』
むむむ、とわからないなりに真剣に考えてくれていた。
もちろん、こんな子どものときに結婚についてすべてを知っているはずがない。今でさえ、ふわっとしたことしかわかっていないんだから当たり前だ。
ただママとパパが結婚して自分が生まれた。だから結婚というのは好きな人同士がする幸せになる方法、くらいにしか思っていなかったんだと思う。まあ、極論を言えばそうなのかもしれないけれど。
『じゃあ、おとなになったらケッコンしてくれる?』
不安げに尋ねる。
もうすぐお別れ。その時間が刻一刻と近づいていることはわかっていた。
だから、なにか一つ、わたしと彼を繋ぐものが欲しかった。
『うん。いいよ』
『ほんとに? やくそくだよ?』
『うん。やくそく』
小指をこちらに向けてくる。わたしはその小指に自分の小指を絡めた。
『わたし、いつかこーくんにあいにもどってくるからね。そしたら、ケッコンしようね』
そんなわたしたちの様子をママたちは温かい目で見守っていた。けど、パパはちょっとだけ申し訳無さそうに、けどどこか複雑な顔だった。
「――」
わたしの大好きな人。八神幸太郎くん。
「――い!」
どこかから声が聞こえてくる。
見えていた光景は次第に光に包まれていき、視界が白く染まっていく。
「結!」
そして、わたし、月島結は目を覚ました。
ソファに座っていて、いつの間にかうたた寝をしていたようだ。
「ママ?」
「準備終わったの? 直前にすると大変なんだから、今のうちに終わらせときなさいよ」
「準備はもう終わってるよ。今すぐにでも出発できちゃう」
あれから何年が経ったのかな。パパの転勤が決まって、わたしはあの街に戻ることになった。
「ようやく会えるわね、こーくんに」
部屋に戻ろうとしたわたしの背中に、ママがいたずらっぽい口調でそんなことを言ってきた。
まあ、これまでずっとそんな話をしてきたのはわたしなんだし、言われても無理はないか。
「うん。ほんとに楽しみ」
あなたは今、なにをして、なにを思っているのかな。
わたしはずっと、あなたのことを思ってきたよ。
あなたも、わたしのことを思ってくれていたらいいな。
早くあなたに会いたいな。
……会えるかな。
「それじゃあ、おやすみなさい」
会えるといいな。
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