別途召喚 〜異世界でもアイツらとはつるまない〜

指ス満

一章 アイツらとは一緒にいたくない。

第1話 みんなで異世界攻略?馬鹿じゃねぇの?

 

 俺、高牧怜(たかまきれい)は毎日が腹立たしかった。


 原因はコイツら、クラスの陽キャ達だ。


 意味のない話をし、馬鹿みたいに騒ぐ。

 

 同じ人間として扱うことを嫌に思う。


 そんな馬鹿どものせいで削れていく俺の心を満たしてくれるのが、この「ライトノベル」だ。


 ラノベは良い…


 夢溢れる冒険!漢のロマン、魔法!美味そうな飯!そして何より……可愛いヒロイン!


 だか俺が愛してやまないラノベでも許せないことがある。



 「ちっ、出たよ友情」



 そう、お仲間という概念の存在だ。


 力を合わせ〜だの、仲間が大変だから助ける〜だの。コイツらの頭はお花畑か。なんで血の繋がりのないヤツを命をかけて助けにゃならんのだ。


 馬鹿だ。この主人公は馬鹿だ。


 俺なら仲間なんて速攻で見捨てる。どうせ一時の関係だ。業務委託だアウトソーシングだ。

 そんなただの仕事仲間を助けてなんの得がある。

 一緒に死んだら元も子もないじゃないか。



 そんなことを考えながらラノベのページを繰る。





 

 次の瞬間、足元に謎の文字が書かれた魔法陣のようなものが出現した。

 これに陽キャ共は騒ぎ出す。


 「ちょヤベぇって!これマジでヤベぇって!」


 「ヤベぇわ!これ本当にヤベぇわ!」


 ……ヤベぇヤベぇうるせぇ…。 


 しかしこれは本当にヤバいな。

 何がヤバいかって、恐らくこれは異世界クラス召喚とか言うジャンルのやつだ。

 オタクにはわかる。


 異世界までこの馬鹿チンパンジー共と一緒に行動するのはゴメンだ。


 俺は教室のドアに手を伸ばす。


 教室のドアは硬く閉ざされており、一向に開く気配がしない。

 

 クソっ…ならば窓から……


 窓に机を投げつける。

 窓は音を立てて勢いよく割れた。

 

 よし!このまま外に……


 教室が光に包まれる。



 いかん…これは間に合わな







 




 

 目を覚ますと、俺は暗く薄汚いところにいた。


 「っ…痛ぇ……。召喚するならもっと丁寧に運べよ…」


 などと愚痴をこぼしていると、俺は目の前の光景に驚きを隠せなかった。


 壁はレンガで覆われ、松明の灯りが周りを照らしている。


 「おいおい……。こういう時って王城とかに召喚されるんじゃねぇのか…」


 俺はこの光景に見覚えがある。

 何度異世界アニメで見たことか。


 そう、ダンジョンだ。


 俺はダンジョンに召喚されたのだ。

 

 「一体どうなって……」



 「やっほ〜聞こえる?」



 頭に声が聞こえる。



 「あ?あんた誰だよ」


 「僕?僕はね〜神様だよ〜」


 神?頭おかしいんじゃねぇの?神なんかいる訳ねぇだろ常識的に考えて。


 「失礼だな〜僕が神様なんだから神様はいるよ!」



 ………思考勝手に読むのやめてもらえませんかね。


 「ごめんごめん!無意識に聞こえてきちゃうんだよ。ほら、僕さ神だから!」


 神だからって……なんでもありかよ。


 しかしこの神はやけにテンションが高い。同じクラスの発狂チンパンジー共と同じ匂いだ。


 好きになれそうにねぇな……。


 「まぁまぁそんなことよりさ!」

 「君にはやってもらいたいことがあるんだ!」


 「やってもらいたいこと?」


 「そうそう!君には仲間を見つけて、魔王を討伐してほしいんだ!」


 「魔王討伐?仲間?やだね」

 「一緒に同じクラスのやつらも召喚されたんだろ?そいつらに頼めよな」


 「いや〜それがさぁ、この世界の魔王めっちゃ強くて〜」

 「人間じゃ太刀打ちできないんだよ」


 「はぁ?じゃあ俺も無理だね!気に食わないが俺もアイツらと同じ人間だ!」



 「…………もしかして君、まだ自分のことを人間だと思っているのかい?」



 「…は?何言って……」

 


 変な感触がする。

 恐る恐る自分の手を確認する。

 

 「な…なんだよこれ……」


 見慣れたはずの手はまるで別人のもの……いや、人ですらなかった。


 白く、細く、曲げるたびにカシャカシャと音を立てる。そもそも肉がついていない。

 

 「お、おい…もしかしてこれって……」


 「ご明察!君はスケルトンに生まれ変わったんだ!」


 冗談じゃない!スケルトンなんてアンデット系雑魚モンスターの代名詞じゃないか!


 「こんな体でどうやって魔王を倒すんだよ!」


 「あはは、そんな怒らないで。君には特別な力を持たせてある」


 「それって…スキル的なものか?」


 「そうそう!話がはやくて助かるよ!」

 「君には種族進化のギフトを授けた」

 

 「種族進化?」


 「まぁ簡単に言えばレベルを上げると進化するってことだね」


 「なるほど…じゃあレベルを上げて進化して強くなってから魔王を倒せってことか」


 「そゆこと!そゆこと!」



 馬鹿にしてんのか……。


 「で、どうやって俺は元の体に戻れて、元の世界に帰れるんだ?」


 「え?あぁ、魔王を倒したら全てが元通りになるよ」

 「まぁ君らは結構イレギュラーな存在だからね」



 「期待してるよ」



 「おい!ちょっと待……」

 「……行っちまった…」



 まぁいい。

 あの陽キャ共とおさらばできたんだ。

 それだけでも良しとしよう。




 

 ……しかしパーティーを組んで魔王を討伐しろか。それにアイツは最後に気になることを言ってた。



 「君ら……か…」


 

 恐らく俺と同じ境遇のヤツらがいるのだろう。

 多分アイツは俺とそいつらを組ませて魔王を倒せと言っているのだ。


 「……アイツのことを信用してもいいのか?」

 

 正直言って俺はまだアイツのことを信用していない。

 急に召喚されて困っているやつにフレンドリーに優しく接する。端からみればイイ奴だ。



 しかしどこか嘘くさい。


 

 ……よし決めた。


 俺はパーティーを組まない、仲間を作らない。





 一人で魔王を倒してやる。


 

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