最弱の「収納魔法」しか使えない魔法学校の臨時講師、実は世界最強の魔導師だった
果 一
第1話 勇者パーティを追い出されました
「レント=シュノー、お前をパーティから追放する!」
勇者、リガールが俺を蔑んだ目で見ながら、そう告げた。
その周囲には、同じくゴミを見る目で見つめる聖職者のウィズに、魔術師のニーナ。
「そ、そんな……!」
俺こと、レントはあまりの理不尽に身を震わせ――
よっしゃあああああああ!
――いや、感涙にむせび泣いていた。
正直、俺はもうウンザリだった。
俺の
ていうか、名前の通りものを出したり入れたりする魔法だから、強さの基準そのものがない。つまり、俺には戦闘は期待されていなかった。
俺が魔王を倒す勇者パーティに参加していたのも、「収納魔法」しか使えないが故に、無限に近い荷物を運ぶことができたからだ。
しかし――
――「お前、戦えない癖に調子にのってんじゃねぇよ! どうせ自分の分の食料は多めに持ってんだろ。早く勇者たる俺に謙譲しろよ!」
――「あんたみたいな無能がウチ等のパーティにいるとか、恥ずかしと思わないのぉ? 荷物持ちじゃなくて、アンタの存在そのものが荷物なのよ。きゃはは!」
――「ああ、主よ。どうかこの哀れな子羊に神の裁きを。具体的には、魔王の幹部に闇討ちされて凄惨たる死の祝福を――」
やかましいわ!!
俺は、数々の暴言を思いだして腹が立っていた。
いや、暴言だけじゃない。憂さ晴らしに僕に向かって聖剣で斬りかかってくる勇者から逃げ回り、八つ当たりで上級魔法をバンバン撃ってくるニーナに黒焦げや氷付けにされ、イラついて文句を言った瞬間、聖職者のウィズに説法を10時間コースで聞かされた。
もうウンザリだ。
こんなクズどもと関わっていたら、命がいくらあっても足りない。
これでもパーティに選ばれた当初は、少しでも役に立とうとレベルが上がったことで手に入るスキルポイントを唯一扱える「収納魔法」に全振りして強化してきたが、そんな僕の思いとは裏腹に耐えがたい仕打ちを受けた。
俺は、多少自分の性格が図太いと思っているが、コイツ等はダメだ。
まあ、ようやく降って湧いた幸運だ。
逃がさないようにしなければ――
「追放されたら、どうやって生きていけばいいんだよ!」
「はぁ? 知らないわよ、んなこと。アンタが死んだって誰も困らないんだし」
「
ゴミを見る目で俺を見るニーナに、両手をあわせてわざとらしく涙を浮かべるウィズ。
こいつら一発殴ってから抜けてやろうか。
「まあそういうわけだ。さっさと消えろ。目障りだ」
そう言って、勇者リガールは「転移魔法を起動しろ」とニーナに命令する。
ニーナが詠唱すると同時に、俺の足下に魔法陣が浮かび上がった。転移魔法は、一度起動すると解除ができない。
発動から対象が飛ばされるまで、数秒のタイムラグがあるのだ。
つまり、発動した今、俺はもう駄々をこねても追放を免れないわけで――
「あ。おいお前。飛ばされる前に、お前が持っていた荷物を俺達に預けていけよ。お前が持ってても仕方ねぇだろ」
「いや、そんなこと言われても。俺の私物もあるんだが」
「はぁ? 誰のお陰で今まで生きて来れたと思ってんのよ。さっさと全部置いていきなさいよ」
「汝、往生際が悪いです」
3人揃って、俺を責め立てる。
そうか、俺に選択権はないってか。そんなに言うならくれてやろう。
俺はパチンと指を鳴らす。
その瞬間――頭上の虚空にゲートが開いた。
そのゲートから落ちてくるのは――レッド・ドラゴンやキラー・アリゲーター、その他今までコイツ等が倒してきたモンスターの死体だ。
食料やアイテムとして交換するために、俺が全部保管していたものを、全てぶちまけた。
「お、おいテメェ何しやがる!」
「ちょっと、落ちてくるんだけど! あんた、なんてことしてくれんのよぉ!」
「ああ、まるで終末の光景――」
巨大なモンスターの死骸が空を覆い尽くし、振ってくるという地獄のような光景に慌てふためく一同。
「クソッタレ、よくも――」
激高して俺に斬りかかるリガール。
が、俺は「じゃあな」と告げた瞬間、魔法陣が輝きを増し――リガールの姿が消える。
転移魔法で、俺の身体は別の場所に飛ばされたのだった。
最弱の「収納魔法」しか使えない魔法学校の臨時講師、実は世界最強の魔導師だった 果 一 @noveljapanese
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