第4話
<一話シナリオ>
○リビング(真っ暗)
旭「もう無理だ」
旭「君とはやっていけない」
・苦しそうな顔で俯いている
・手には拳が握られている
咲奈「じゃあ離婚届け、書いて」
・すまし顔
・感情が欠落したような抑揚のない口調
旭「どうして……」
旭「どうしてこんなことに」
・ドンッとこぶしでテーブルを叩く
・悔しそう
咲奈「あなたが悪いのよ」
咲奈「理解してくれないから」
咲奈「私はみんなのためを思ってやってるのに」
・無表情
・早くと言わんばかりに離婚届けを突き付ける
咲奈はもうこれまでの咲奈ではなかった。
旭「……わかった」
旭「別れよう」
○リビング(朝)
一年前
咲奈「え! 転勤!?」
・咲奈はキッチンでお玉をもったまま固まる
・リビングでは娘が走り回り騒がしい。
旭「あぁ、実はそうなんだ」
・ダイニングチェアに座って朝ごはん中
・隣には息子の太陽がいる
・旭がごはんを食べせている
咲奈「どうしてそんな大事なことを」
咲奈「こんな朝に……」
那奈「ママ―、体操服どこー?」
・ランドセルに教科書を詰めながら叫ぶ
咲奈「押し入れよ」
咲奈「どうして夜用意しておかなかったの」
・準備する那奈を見て、再び旭に視線を移す
旭「なかなか言い出せなくてさ」
・ちょっとばつが悪そうな顔
・太陽は無邪気にもぐもぐとご飯を食べている
咲奈「じゃあ、引っ越すの?」
旭「……そうなると思う」
旭「恐らく、関東の方」
咲奈「そんな……」
・ショックを受けた顔
・旭はちらちらと咲奈の様子を伺っている
・そこにランドセルを背負った娘の那奈が駆け寄ってくる。
那奈「え! お引っ越し!?」
那奈「じゃあ那奈もっと広い家がいい!」
・無邪気な那奈
・にこにことしながら飛び跳ねている
咲奈「那奈、転校することになるのよ?」
咲奈「いいの?」
・腰を折り、諭すように話しかける
那奈「いいよ!」
那奈「友達増えて楽しそうだもん!」
・どこまでも前向きな那奈
・咲奈はあきれ顔だが旭は嬉しそう
旭「そうだよな」
旭「那奈はどこへいっても人気者になれそうだもんな」
那奈「ねぇねぇ、パパ」
那奈「関東って東京? 芸能人いる?」
旭「いるかもなー」
那奈「じゃあジャニーの平尾くんもいるかな?」
・目をキラキラさせている
旭「いるさ。会えたらいいな」
那奈「ほんとー!やったー!」
那奈「ママ! 平尾くんに会えるんだよ! いいじゃん」
那奈「早く行こうよ!」
咲奈「那奈ったら……」
・困ったように笑っている
・だけど那奈のお陰で自然と前向きになっていた
旭「大丈夫だよ、咲奈」
旭「家族が一緒にいたらどんなことも乗り越えられる」
・真面目な顔で語り掛ける
咲奈「そうね」
・小さく頷いた
・やっと笑った咲奈をみて旭はホッとする
那奈「あ、いかないと。理子ちゃんがまってる」
那奈「いってきまーす!」
咲奈「待って那奈! 皮膚のお薬塗ったの?」
那奈「塗ったよー! いってきまーす」
咲奈「車に気を付けるのよ!」
那奈「はーい」
・那奈は元気よく家を出て行った
○ベランダ
旭「那奈には救われるな」
・ベランダから顔を出し那奈を見送っている
・那奈は友達と楽しそうに学校に行っている
・太陽は咲奈に抱かれている
咲奈「そうね」
咲奈「前向きで明るくて」
咲奈「誰に似たのかしら」
・二人で顔を見合わせクスクスと笑う
旭「じゃあ俺もそろそろいくよ」
咲奈「うん、行ってらっしゃい」
・チュッと咲奈にキスをする
・旭は家を出て行く
○場面転換(マンションの下)
旭はマンションの下から手を振っている
咲奈も太陽と一緒に手を振る
旭(よかった)
旭(咲奈も納得してくれたみたいで)
旭「よーし! 頑張るぞー!」
旭「俺が家族を守る!」
・ガッツポーズしながらつい大きな声を上げてしまう
・通行人にチラチラとみられ赤面する
旭(やべ、恥ずかしい)
・頭を掻いている
○場面転換(リビング)
咲奈(旭の言う通り。家族がいれば大丈夫)
咲奈(三人は私の宝物だもの)
咲奈(不安になることなんてない)
咲奈「さ、お掃除しなきゃ」
・掃除機をかける
・太陽はテレビを見たりおもちゃで遊んだりひとり遊び中
ナレ:
岩倉咲奈は31歳の専業主婦だ。優しい夫と、可愛い子どもに囲まれ平凡な
毎日を過ごている。なんの不自由もなくすごく幸せ。
この幸せがずっと続くと思っていた。
だが、ある人との出会いが咲奈たち一家を一変させるのだった。
○数か月後
引っ越し当日
那奈「わぁー綺麗なお部屋!」
那奈「那奈のお部屋もある?」
・キョロキョロと嬉しそう
旭「あるぞー」
旭「今日から一人で寝るか?」
那奈「え!それはどうかな~」
・へへっと誤魔化している
・那奈は一人で寝るのことができない
・旭はからかっているのだ
・そんな那奈がおかしくてみんなで笑った
旭「咲奈、キッチンも綺麗だぞ」
咲奈「本当ね」
咲奈「IHなのね。嬉しいわ」
・キッチン周りを見て回っている
それから少しして、業者の人が入ってきた。
業者「今から搬入させてもらいます」
旭「はい。よろしくお願いいたします」
・あっという間に片付く。
○その夜(ダイニングキッチン)
旭「ふぅ、疲れたな」
咲奈「お疲れ様」
咲奈「ちょっと飲む?」
・ビールを差し出す
旭「お、いいね」
・そして二人で乾杯した
旭「咲奈も、お疲れ様」
旭「やっぱり子連れで引っ越しは大変だな」
咲奈「そうね」
・ビールを一口飲む
・だがどこか浮かない顔
・そんな咲奈に旭はすぐに気がついた
旭「不安?」
咲奈「あ、うん……ちょっと」
咲奈「那奈の学校の手続きもあるし」
咲奈「ご近所付き合いとか」
咲奈「太陽の病院だって探さなきゃ」
旭「焦らなくていいよ」
旭「ゆっくりやっていこう」
旭「な?」
・咲奈の手に手を重ねる旭
・咲奈はコクンと頷いた
咲奈は少し不安症なところがある。那奈が生まれたばかりのときも、産後鬱になりかけた。
今回の引っ越しも咲奈にとってストレスが大きい。旭は心配していた。
旭「寝ようか」
旭「おいで、咲奈」
咲奈「え?」
咲奈「でもまだ片付けが……」
旭「明日俺がやるよ」
・強引に寝室へ
・こどもたちは大の字で寝ている
旭「今日はくっついて寝よう」
咲奈「どうしたの?」
旭「咲奈と一緒に寝たいんだよ」
旭「ダメか?」
咲奈「う、ううん」
・ちょっと恥ずかしそうに首を振る
・すごくうれしそう
咲奈は旭に腕枕をしてもらい、眠った。不安だった心が少しずつ和らいでいくのを感じていた。
○翌朝
那奈「あれー?」
那奈「パパとママどうして一緒に寝てるのー?」
・那奈と太陽の顔がドアップ(覗き込んでいる)
咲奈「こ、これはその……!」
・気まずい
・那奈と太陽はキョトンとしている
旭「たまにはパパだってママと寝たいんだよ」
旭「いいだろ? 那奈」
那奈「ふーん、別にいいけど」
那奈「ママとパパ、らぶらぶだね」
・顔を見合わせる旭と咲奈
・クスクスと笑い合う
旭「よーし、那奈」
旭「今日はパパと一緒に朝ご飯を作ろうか!」
那奈「うん!」
那奈「那奈、ホットケーキがいい」
・はしゃぎながらキッチンへ
・その背中を見つめる咲奈
咲奈(家族が一緒に居れば、どんなことも乗り越えられる)
咲奈(本当だったね、旭)
咲奈(ありがとう)
○その日の夕方(街中)
咲奈と那奈は学校の準備のために買い物に出ていた
咲奈「明日から新しい学校だけど大丈夫?」
那奈「大丈夫だって」
那奈「ママ、心配しすぎ」
咲奈「だって……」
・手を繋いで歩いている
・咲奈は不安げ。那奈はにこにこ
マンションのエントランスに着くと
一組の親子と遭遇した。
これが小鞠との出会いだった。
咲奈(あ、同じマンションの人かな)
咲奈(最初が肝心よね)
咲奈(しっかり挨拶しなきゃ)
咲奈「こ、こんにちは」
・親子が振り返る
・那奈と同じくらいの年の女の子がいる
小鞠「こんにちは」
小鞠「もしかして新しく引っ越してきた方?」
・品があって美人
・咲奈は思わず見入ってしまう
咲奈「はい。岩倉です」
咲奈「娘の那奈です」
咲奈「よろしくお願いします」
小鞠「吉瀬です。よろしくね」
小鞠「娘さんおいくつ?」
咲奈「7歳です。一年生です」
小鞠「あら。うちの樹里と同じね」
・樹里がぺこっと頭を下げる
・すごくしっかりしているといった印象
咲奈「那奈。ご挨拶は?」
那奈「岩倉那奈です!」
・歯をむき出しにしてにっこりと笑う
・するとなぜか小鞠が那奈に近づいてきた
小鞠「那奈ちゃん。ちょっとお肌が弱い?」
咲奈「え? あ、はい」
咲奈「アトピーがあって」
咲奈(どうしてわかったんだろう)
小鞠「そう。それは可愛そうね」
小鞠「あ、そうだわ」
・バッグから何かを取り出した
・化粧水のような瓶を咲奈に渡す
小鞠「これ良かったら使ってみない?」
咲奈「え?」
小鞠「お肌にすごくいいの」
咲奈「で、でも……」
小鞠「いいの。遠慮しないで」
小鞠「樹里もこれでお肌がつるつるになったの」
咲奈「そうなんですか」
咲奈(確かにお肌が綺麗)
咲奈(那奈はいつも病院でお薬をもらってるけど)
咲奈(なかなか治らなかったりするのに……)
咲奈「あの、ありがとうござます」
咲奈「じゃあ、お言葉に甘えて」
・小瓶を受け取る
・小鞠は上品な笑顔を浮かべている
小鞠「いいのよ。これからは同じマンションの住人同士」
小鞠「仲良くしましょ?」
小鞠「これ、名刺」
小鞠「よかったら部屋にも遊びに来てね」
・名刺を受け取る
小鞠「それと、那奈ちゃんのそのお洋服……」
・少し険しい表情
咲奈「え? 洋服ですか?」
・慌てて那奈の服を見る咲奈
咲奈(なにかいけない?)
咲奈(確かにセール品だけど)
・那奈はキョトンとしている
・樹里は那奈を見て勝ち誇ったような顔
小鞠「ううん、なんでもないわ」
小鞠「それじゃあ」
咲奈「あ、はい。ありがとうございました」
・綺麗な姿勢で帰っていく小鞠親子
・その背中を見送る咲奈たち
那奈「樹里って子、嫌な感じ」
咲奈「そんなこと言わないの」
・名刺に目を落とす
・名刺にはこう書いてあった
はぐくみの木代表 吉瀬小鞠(kitise komari)
咲奈(はぐくみの木?)
咲奈(どんな会なんだろう)
これが小鞠との出会いだった。
ママ友に洗脳され、すべてを失いかけました 一宮梨華 @ichimiya_rinka
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