第3話
<あらすじ>
●一話
岩倉咲奈は、どこにでもいる平凡な主婦。優しい夫と、可愛い子どもに囲まれ毎日幸せに暮らしていた。だがあるとき、夫の転勤が決まり引っ越しをすることに。縁もゆかりもない土地で暮らすことに不安を感じる咲奈だが、家族に励まされ新たな土地で頑張る決意をする。
引っ越した当日、咲奈は吉瀬小鞠という女性と知り合う。小鞠は同じマンションに住んでいて、娘も同い年だという。小鞠は那奈の顔を見てすぐに、肌が弱いと見抜く。そして初対面にも関わらず、バッグに入っていた謎の液体を渡してくる。「これがよく効くのよ」と言われ、咲奈はそれを受け取った。
同時に名刺ももらい、よかったら今度部屋に遊びに来ないかと誘われる。名刺に目を落とすとそこには「はぐくみの木代表 吉瀬小鞠」と書いてあった。はぐくみの木とはなんだろうと不思議に思いながら、咲奈は自宅へ帰って行った。
●二話
翌日。娘の那奈は初登校。朝からバタバタとしていた。物怖じしない那奈は元気よく家を出ていく。そんな那奈を見送っていると、小鞠やその友達らしきママ集団と遭遇する。挨拶だけしてすぐに戻ろうとしたが、小鞠に呼び止められる。
聞けばみんな「はぐくみの木」のメンバーで、これからみんなで集まるのだとか。咲奈は小鞠にぜひ来てと誘われ、部屋に行くことの。
太陽を連れ部屋を訪れるとそこには、教育や育児に熱心なママたちばかりが集まっていた。どこの野菜がいいとか、どこの洋服がいいとか、そんな話が繰り広げられていた。集まっているメンバーもみんな親切で歓迎ムード。咲奈はホッとする。元々あまり人付き合いが得意ではなかったため、仲間に入れたことが嬉しかったのだ。
そこで咲奈は太陽の病院がまだ決まっていなかったため、どこがいいかみんなに尋ねた。予防接種も残っているものがあると言うと、場がざわつき始める。
注目の的になり、たじたじになった咲奈を見兼ね小鞠が割って入る。そして「ここにいるみんなは、ワクチンはしないの。太陽くんもワクチンなんて打たなくていいのよ」と言った。ワクチンには害があり、子どもが病気になったときは特別な水を一口飲ませ、拝めばいいのだとか。シャンプーも、月に一度しかしないのだという。驚く咲奈だが小鞠に「ママがそんなんだから、那奈ちゃんは肌が弱いのよ。きちんとお勉強しなきゃ」と言われ、咲奈は愕然しながら部屋に戻るのだった。
●三話
部屋に帰って咲奈はいろいろと調べ始めた。ワクチンのこと、薬のことなど、知れべれば調べるほど自分は間違った育児をしてきたのだと思込みはじめる。
そんな落ち込む咲奈に、旭が気がつき声をかける。咲奈は間違っていないし、現に那奈は元気だというが咲奈は「でも……」と旭の声が耳に入らない。小鞠に教えてもらったサプリや水を買い始める様になり、そのせいで家計は圧迫。ごはんも質素に。だが咲奈は小鞠を信じ、はぐくみの木の会員になるのだった。
ある日、部屋にいると救急車の音がした。それはマンションの下で止まり、子どもが運ばれているようだった。
はぐくみの木の集まりにいくと、運ばれたのはメンバーの子どもだと知る。どうやらその子にはアレルギーがあったらしく、それが原因だろうと。それでも、その家庭は薬はNGの方針をとっていた。ここではアレルギー反応は、毒素がでていていい傾向だという認識だった。咲奈は「なるほど」と熱心に小鞠の言葉に耳を傾けた。
●四話
旭は咲奈の変わりように異常さを感じていた。ついに旭はやりすぎはよくないと咲奈に言及する。だが聞く耳を持たず、ますますヒートアップしていく。変わっていく咲奈に家族はみんな心配していた(常にピリピリしていて、那奈は好きだったお菓子も買ってもらえなくなり不満が募る)
あるとき、小鞠は旭が昔タバコを吸っていたことを知り、彼は父親としてふさわしくないと咲奈を説得し始める(旭は子供が生まれて禁煙した)。小鞠は「煙草は子どもの命を脅かす。彼の皮膚から毒素が出ている。今も刻々と子供たちを死に追いやっているの」と言い放ち、しまいには別れた方がいいとまで言い、咲奈は悩み始める(もちろん小鞠の持論で確かな根拠はない)
しかも旭は、禁煙したと言っていたのにどうやらこっそり吸っていたらしく、それを知った咲奈は腹を立て旭を責めた(旭はストレスが溜まり、やめていたタバコに手を出してしまったのだ)。
二人は喧嘩が増え、段々と不仲に。子どもたちも元気がなくなっていき家庭内は冷えきっていった。
その一方、小鞠は不倫相手である医師とお楽しみ中だった。
「サプリは売れてるか?」
「はい。また新しい仲間が増えたの」
そんな会話をしながら、ギシギシとベッドを揺らしていた。
●五話
そんなあるとき、太陽が熱を出す。だが咲奈は病院には行かず、自然に治すと言い張る。それが一番いいと小鞠が言っていたからだ。しばらく様子を見ていたが、段々と衰弱していく太陽が心配になり、旭は咲奈の制止をふりきり病院へ。すると太陽は肺炎になっていて、入院が必要なほど悪化していたのだ。
それでも咲奈は、入院なんてしなくていいと拒んだ。そんな咲奈についに旭はキレる。退院したら子どもたちを連れて家を出ると言ったのだ。
旭は太陽に付き添い入院。那奈は旭の実家へ預けられる。
そんな中、咲奈はすぐに小鞠に相談した。小鞠は全部夫が悪いと言った。離婚するべきだと言い、咲奈は言われるがまま離婚届を書き、旭が帰ってきたのと同時にそれを突き付けた。もう何を言っても無駄だと思った旭は離婚届けを握りしめ、子どもたちと出て行った。
●六話
ポツンと取り残された咲奈は、自分はみんなのためを思ってやってきたのに、どうしてわかってくれないのだと、一人部屋で暴れる(写真を破ったり、食器を割ったり)。
その翌日、この前運ばれた子が亡くなったと知り、咲奈は愕然とする。自分は間違っていたのかもしれないと、やっとことの重大さに気がつく。旭の言葉に耳を傾けず、小鞠の持論を信じた咲奈の手元に残ったのは、サプリや洗剤、そして借金だけだった。
目が覚めた咲奈は一人泣きじゃくり、後悔する。もう、自分は死んだほうがいい。そう思い詰めていた時、旭がやってくる。旭は咲奈に「離婚届はまだ出していない。カウンセリングを受けよう」と提案。咲奈は旭やカウンセラーの先生のお陰で自分を取り戻すことができる。そして再び4人で暮らすことになる。
堕ちた先に見えたのは、本当の愛だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます