第7話

理央との出会いを忘れることはないだろう。


「あ、ねえ!! 、落ちたよ」

「え?」


 入学式の朝、前を歩く男の子が落としたものを拾い上げて、そう声をかけた。

 彼が落としたのは、キーホルダー。

 青く輝くプレートの中に、描かれていたのはだ。


「ありがと、でも、それプレアデス星団だけどな」


 銀縁メガネくんが、ニヤリと笑った。


「プレアデス星団、通称すばる、でしょ? 知ってるよ」


 私は自分の鞄についている『おおぐま座の渦巻銀河』のキーホルダーを自慢げに見せる。

 まるで彼のキーホルダーとお揃いのように見えるこれは、去年の星空展覧会で買ったもの。

 あの場所でしか売ってなかったものだ。


「お! 『おおぐま座の渦巻銀河』じゃん!!」

「うん『ボーデの銀河』とも言うよね」


 今度は私がニヤリとして彼を見上げたら、眼鏡の奥の目が嬉しそうに細くなる。


「俺、家に『ソンブレロ銀河』も持ってるぜ」

「え、いいなあ。私、迷って『オリオン座大星雲』にしちゃったんだよね」


 他の人が聞いたら、ちょっと引いちゃうような会話が弾んだ。

 初対面なのに、こんなに星のことを話せる人、他にいなかった。

 それからすぐに二人だけの天文学部を結成したのだ。

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