第6話

「そういう神話も知れば面白かったりするよな」

「え?」

「奏の星の楽しみ方を知ってみたかったんだ」

「結構、面白いでしょ」

「うん、もっと早く勉強しとけば良かった」

「じゃあ、月に兎はいると思う?」

「それはない」

「なら、かぐや姫は?」

「それもない」

「いるかもって思う方が、絶対楽しいのに」


 去年の十五夜、満月の夜電話をしながら、同じことを話した。

 理央もきっと覚えているのだろう。

 横を見たら、頬が上がっているのがわかった。


「なあ、次は、ふたご座流星群」

「うん?」

「冬、また観に来ようぜ? ここに」


 こちらに顔を向けて笑う理央に、曖昧に頷く。

 そんな約束をしてしまったら、私はまだ期待してしまう。

 理央との変わらぬ日々が、明日からもずっと続くことを――。

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