第2話

理央りお、おそーい!」

「そっちは、早すぎん? よく一人でこんなとこ登って来れたな? 怖くなかった?」

「怖いに決まってるでしょ! 心配してくれてたなら、とっとと来てほしかったよ。あんまり遅いから、今夜の約束、忘れちゃったのかと思ってたし」


 むうっと頬を膨らませて睨んだら、理央の目が泳いだ。


「あ! やっぱ、忘れてたんでしょ?」

「え、っと……、さっき、うん。実はついさっき思い出した。なんで忘れてたんだろう?」


 眼鏡の奥の目は全く悪びれず、ニッと歯をこぼした理央を、眉間みけんにしわを寄せて睨みつける。

 それでも彼が笑顔なのは、私が本気で怒ってないことを、わかっているからだ。


「忘れてた割には、準備万端だね」

「あったりまえ! もう三日前から用意してたっての」


 黒いリュックサックを背負い、手には懐中電灯。それは、私のと同じように赤いセロファンを巻いたものだ。

 こうすることにより、暗闇に目を慣らして、小さな光の星を見ることができる。

 自称天文学部員、部長の理央、副部長の私、こういった小物も二人で調べて作った。

 尚、他に部員はなし、だから自称なのだ。


「あ、流れた!」


 目の端に大きな流星が横切って私は慌ててまた手を合わせる。


「願いごと?」

「悪い?」

「流星なんか、チリだからね? 高温になって気化したチリの成分が光を放つ現象だからね?」

「わかってますう! 物理的にはわかってるけど、理央には浪漫ロマンが足りな過ぎる」

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