第16話 全国大会の舞台
全国大会当日。雅は会場となる大きな競技場に足を踏み入れた。地方予選の時とは比べ物にならない規模の観客席、そして日本全国から集まった強豪選手たちの緊張感が漂っている。雅は心臓が高鳴るのを感じながらも、深呼吸をして気持ちを落ち着けた。
新たな世界への第一歩
スタンドの応援席には、佐藤、高橋、そして部活の仲間たちや家族がいる。翔が手作りの応援旗を掲げながら大きく手を振っている姿が目に入り、雅は自然と笑みがこぼれた。
「ここに来られただけで幸せ。でも、全力で挑む。」
雅は自分にそう言い聞かせ、ウォーミングアップを始めた。
ライバルたちとの出会い
準備エリアで、雅は地方予選で出会った里奈と再会した。里奈も予選を突破して全国の舞台に進んできたのだ。
「雅さん、また会えたね!」
里奈が手話で話しかけてくる。
「里奈さんも頑張ってたんですね。一緒に頑張りましょう。」
さらに、他の選手たちも挨拶を交わし、短い時間の中で交流が生まれた。雅にとって、同じ音のない世界で戦う選手たちとの出会いは、勇気と刺激を与えてくれるものだった。
予選レース
全国大会の100メートル競技は、まず予選レースが行われる。雅は予選第2組で走ることが決まった。隣のレーンには、地方予選で1位通過を果たした選手が並んでいる。
スタートラインに立った雅は、旗を持つ審判に集中する。これまでの練習と経験を思い出しながら、自分のリズムを信じることにした。
「いける。私は走れる。」
旗が振られると同時に雅は全力でスタートを切った。
風を切る走り
雅のスタートは完璧だった。スタートダッシュでリードを取り、中盤の加速力も練習の成果が発揮されている。隣の選手が迫ってくるが、雅はフォームを崩さずに走り続けた。
「もっと、もっと前へ!」
ゴールラインを越えた瞬間、雅は息を切らしながらタイムボードを見た。
「12秒0」
これまでの自己ベストを更新し、予選1位で通過した雅は、思わず拳を握り締めた。
仲間たちの声援
応援席からは部活の仲間たちや家族が大きく手を振り、喜びを伝えている。翔が掲げた旗が目に入り、雅は小さく笑みを浮かべた。
「これが私の走り。」
佐藤と高橋も駆け寄り、手話で伝える。
「素晴らしい走りだった。君は成長している。」
「次は決勝だ。リラックスして挑め。」
雅は深く頷き、次のステージに向けて気持ちを切り替えた。
決勝への準備
決勝戦は全国大会の最終プログラムのひとつ。観客の注目が集まる大舞台だ。雅は緊張を感じながらも、これまでの努力と支えてくれた人々の顔を思い出し、自分を奮い立たせた。
「私はここまで来た。後は全力で走るだけ。」
スタートラインに立つ雅。その目には、これまでにない強い決意が宿っていた。
未来へつながる一瞬
音のない世界でも、雅の走りは確かに誰かに届いている。そして、その走りが次の大きな舞台への道を切り開いていくのだった。
決勝のスタートラインに立つ雅を映した日差しが、彼女の未来を明るく照らしていた。
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