第8話
そんな彼とまさか同じチームになるだなんて、驚きと。
少しの恥ずかしさと嬉しさ。
あの時のことをお互いにまだ話したことはないけど、きっとわかってるはずだ。
あれが私だったってことも気づかれてると思う。
「夕菜、ポカリ準備してー。ゆっくりでいいからね」
「はーい!」
練習の手伝いをしている二年、三年マネージャーさんたちの指示で両手に空のジャグを持ち水道に向かう。
大量のポカリを作り体育館へと運ぼうとするけど、ジャグ二個は相当重い。
腕力ないんだよなあ、がんばれ、自分!
皆、喉カラカラで待ってるぞー!
気合いを入れて持ち上げようとしたジャグの一つを目の前で掴み、持ってくれる人がいた。
「新木が無事持ってこれるかわからんから手伝ってやれって」
「アハ、ありがとう」
どういたしまして、と隣を歩く彼の身長は、あの頃よりも十センチくらい伸びてるんじゃないかな。
「今日はなんかやらかしてない?」
「まだ、やらかしてないもん!」
フンっとふくれてみせた私にアオイくんは楽しそうに笑う。
つい先日、よろけながらジャグを持ってきた私は、体育館に辿り着いた瞬間、盛大に転んだ。
ゆるんでいたジャグの口から、零れだす大量のポカリ。
バスケ部ばかりではなく、体育館にいた他の部活の生徒たち、総出で掃除させてしまったことをアオイくんは思い出しているのだろう。
いつも何かしら私がドジをしでかすことをアオイくんはもうわかっている。
「もう、笑いすぎだし!」
ベエッと舌を出したら、アオイくんはごめんねと目を細めて、私が持つジャグに手を伸ばす。
「貸して? やっぱ、そっちも心配だからオレが持ってく」
そのさり気ない優しさに、なんだか勘違いしそうになる。
そんなことはあってはいけないのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます