第5話
じゃあね、と皆の背中を見送った後、落ちていたタオルを拾いに行く。
あの人、どこに行っちゃったんだろうと探す私の耳に、水道の音が聞こえてきた。
備え付けの外水道、頭を蛇口の水でザバザバ洗っている彼の姿を見つけた。
顔もジャブジャブ洗い流して、それがまるで涙も拭い去っているみたいに見えて、なんだか切なくなって立ちすくむ。
洗い終えた彼は、自分の首元に手をやり、タオルを探し出す。
「はい」
タオルの汚れを振りはらって手渡したら、後ろ手に受け取りゴシゴシと顔と頭を拭いてから彼は私を振り返り、驚いていた。
「え? えっと、第二中のマネージャー?」
「うん。タオル落とすの見かけて」
「悪い。拾ってくれて助かった」
「いえ! あ、あの、すごかったね」
「はい?」
「めちゃくちゃ上手だった! 私が中学三年間で見てきたどこのポイントガードよりも上手だったと思う、感動しちゃった! なんで今まで知らなかったんだろ」
「……、どうも」
ボソッとぶっきらぼうにつぶやいた彼が、なんだか照れくさそうに目を反らすから、自分が何を言ったのか自覚し急激に恥ずかしくなる。
でも、伝えたかったんだ。
ちゃんと、あなたのプレイに感動したってこと。
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