本当は

マクスウェルの仔猫

本当は

「すごかった! さすが運動部!」

「あはは、サンキュです。思ったより頑張れた」


 照れている。

 可愛い。


「俺も褒めて褒めて! 全体でもクラスでも、いっちばーん!」

「俺も俺も! クラスでにっばーん!」

「すごいすごい!」

「くっ……お前らのせいで全然目立たない……」

「「うえーい!」」


 一瞬。


 ほんの一瞬だけの苦笑いの後、ハイタッチをかわす2人を楽しげに見つめる金井君。マラソン大会でクラス3位、学年で16位はすごいと思う。


 でも……私は知っている。


 マラソン大会の発表をした時に、頬を染めながらそっと拳を握ってたこと。目に力が宿っていたこと。そして、去年勝てなかったこの2人に今年は勝ちたいと頑張っていたと


 努力家で優しくて、誰に対しても公平な態度で接する事が出来るクラスの重鎮的な存在は、そんな自分を語ることはない。


 けれど。


 本当はもっと褒めたかった。本当は、君の隣で悔しい気持ちを受けとめられるような存在でありたかった。
















 教師と生徒じゃなかったら。


 このかせがある限り、命を終える最後の瞬間まで金井君にこの想いを告げる事は無いだろう。



 ……あーあ。

 もっと遅くに生まれてたらよかったのに。

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本当は マクスウェルの仔猫 @majikaru1124

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