概要
分類に対する悪夢が始まったのである。
田口諭吉は世界を構築するのに悩んでいた。自分の世界はいつも空想のなかにあった。例えばそれを毎晩かかさずに日記に記す少女のように、言葉として記録に残すこともなければ、記憶を忘れて前に進んだりもしない。彼は国立ハンセン病資料館に向かう。その道中で流流という女性に声をかける。彼女を愛したいと切に願う。しかし、そのためには世界の構築が必要不可欠だったと気づく。それ以外は欺瞞だと思う。方法がわからずにいた。彼は次第にかつての感染症の患者と自分の生活とが相容れないものだとわかってくる。消えていく紙幣と偶然同じ諭吉という名前が失われていくのを気にしながら……。
新人賞を目指すのを辞めた清水のデビュー作。文体はどこか不安定で探り探りの感は否めない。彼はこの作品で現実と和解しようとした。そんな決めつけられた言
新人賞を目指すのを辞めた清水のデビュー作。文体はどこか不安定で探り探りの感は否めない。彼はこの作品で現実と和解しようとした。そんな決めつけられた言