解放したいけど

 銀行の非常電話、そして私達の携帯からの電話による通報はもちろん、メールやLINEによる通報もない事が証明されたが、私達は犯人より携帯やスマホが没収されそうになっていた。


「とりあえずこれ以上銀行の様子を外にもらすわけにはいかないからな」

「あのお、スマホは仕方ないんですけど、そろそろこの子のオシメを替えさせてもらっていいですか?」

「何だって?臭いがこもっても嫌だしな、だが逃げねえように見張らせてはもらうぞ」

「はい」


 自分と子供を守る為とはいえ、ちょっと素直すぎるかもこのお母さん、仕方ない、ここは私が言わないと。


「あのお、いくらなんでも赤ちゃんを人質にしているとあなた方の負担も大きいし、せめてこの親子は開放してもらうわけにはいきませんか?」

「ダメだ、別に俺達はてめえらが邪魔になったら撃ち殺せばいいだけだし、今はお前らに人質の価値があるから生かしているに過ぎねえ」

「でもこうやって、オシメ交換もありますし、解放してあげてもいいんじゃあ」

「だったら、この銀行の本店の奴らが10億をなるべく早く集めるのを祈ってろ、それができりゃあお前らは解放して俺達は逃げられるからな」


 くう!この犯人、全然こっちの話を聞く耳持ってないんだから、仕方ない、ここで話を終わらせようと思ったら、犯人がまた私達に言ってきた。


「おい、お前ら、本当に誰1人警察に通報してねえだろうな!」

「何を言ってるんですか?非常電話で通報したあとはなかったし、私達の携帯を見てもしたあとはなかったでしょう?」

「そうなんだが、俺達の姿は見てねえし、客と行員はお前らしかいなかったしな、シャッターを閉める瞬間も外の奴は見てねえはずだ」


 私は外の人がシャッターで不審に感じたから通報したと思ったけど、違うのかな、そう思ったら、突如没収したスマホの1つが鳴り出した。


「あ……」

「ん?今お前、何かまずそうな顔をしたな、ちょっと見せろ」

「あ、待って」


 若い男の人が慌てている、でもこの人も前後に電話はもちろん、メールやLINEをしていた形跡はなかったはず。


「おい、てめえ『いいね』ってどういう事だ?」

「あ、ははは、実はさ俺、SNSをやっていて、も、文字だったんだけど、銀行強盗なうって書いたら誰かが通報してくれたみたいっすね」

「何だと!じゃあ、中の状況をつぶやいったてのか!」

「そんな暇なかったし、あくまで銀行強盗だけだよ、でもどこの銀行かなんて書いてないっす確かめてくださいよ」


「これだな、確かにそうだな、ん?ダイレクトメッセージ?」

『とりあえず通報したから安心してくれ、お前の銀行確かそこだったはずだからさ』

「……おい、単なるフォロワーがなんでお前の地元の銀行を知っているんだ?」

「そ、それはリア友もフォローしてくれているから、そいつが通報してくれたんでしょう」


 SNSを通して通報か犯人が無警戒だったところの隙を突いたのね、でもまあ結局ばれるよね。


「頭来たからぶち殺してえところだが、お前のSNSを見る感じ、具体的な事は書いてなさそうだな、まあ、俺達も目的は金で人殺しじゃねえからな」

「あざっす、はあ、一時はどうなるかと思ったあ」

「だが今度なめた真似しやがったらぶち殺すからな、そのつもりでいろよ」

「う、ういっす」


 ある意味この人のおかげで、警察が来てくれたけど、それでも危険な事に変わりはなかったし、ここは注意しないと。


「ねえ、通報のきっかけを作ってくれたのは感謝するけど、危ないからもう止めてね」

「ういっす、まあでも銀行強盗に巻き込まれるなんてあんまないっすから」

「一生に1回あるかないかでしょう、せいぜい!もうイベント感覚から離れなさい!」

「へーーい」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る