第20話:新たな挑戦、「恐怖の脱出ダンジョン」
温泉宿の一室で、光三郎はリリィとダンジョンの新しい計画について話し合っていた。
「そろそろ、このダンジョン内だけで使える通貨を『ダンジョンポイント(DP)』として流通させようと思うんだ。」
光三郎が提案すると、リリィは興味津々な表情を浮かべた。
「普段使ってるダンジョンポイントと同じ名前だね。」
「そうだ。でも、本来のダンジョンポイントの用途をみんなに知られたくない。それに、通貨としてのダンジョンポイントと、ダンジョンを改変したりモンスターを召喚したりするためのダンジョンポイントを同じ名前にしておけば、うっかり口にしても不自然じゃないだろう?」
光三郎の説明にリリィはうなずいたが、すぐに疑問を投げかけた。
「でも、それってどうやって稼ぐの?」
光三郎は顎に手を当て、少し考え込んだ後、答えた。
「そもそもDPを生成するには、ダンジョンコアの特性上、感情の起伏が必要なんだ。特に驚きや恐怖みたいな強い感情が有効だと思う。」
「驚きや恐怖……それなら、脱出ゲームとお化け屋敷を組み合わせたアトラクションを作ればいいんじゃない?」
リリィの提案に、光三郎は目を輝かせて頷いた。
「それだ!挑戦するたびにドキドキできる仕掛けをたくさん詰め込めば、きっと面白いものが作れる。」
こうして、光三郎の指示のもと、ダンジョンの一部に新たなアトラクションが作られることになった。その名も「恐怖の脱出ダンジョン」。
現代技術を模倣した仕掛けを駆使し、謎解きにレーザーや動く壁、センサーなどを使用。近未来的な装置で挑戦者を追い詰めるリアルな仕掛けを用意した。危険はないが、不意にモンスターが現れるほか、不気味な音や影が心理的な圧力を与え、恐怖を最大限に引き出す仕掛けになっている。挑戦者は制限時間内にすべての謎を解き、出口にたどり着かなければならない。
完全攻略できれば大量のDPを獲得可能。ただし、途中でリタイアしても、恐怖体験に応じた少量のDPが与えられる仕組みだ。
準備を進める中で、リリィがふと疑問を口にした。
「そういえば、このDPって外で使われるお金と何が違うの?」
光三郎は手を止め、リリィに説明を始めた。
「外のお金は村や商人街で使える一般的な通貨だ。でも、DPはダンジョン内限定の通貨で、特別なサービスや割引で商品を購入できる。それに、DPでしか手に入らないものを用意すれば、みんな恐怖の脱出ダンジョンに挑戦したくなるだろう。」
リリィは頷きながら聞き入る。
「じゃあ、DPはここだけでしか使えない特別な通貨ってことだね!」
光三郎は続けた。
「その通りだ。例えば、特別メニューのフルコースや、ゴーレムのカスタマイズパーツなんかもDPで買えるようにするつもりだ。」
リリィがにっこり笑って答える。
「なんかワクワクしてきた!きっとみんな、たくさんDPを貯めて使いたくなるね!」
数日後、「恐怖の脱出ダンジョン」がついに完成した。入り口には不気味な装飾が施され、挑戦者を誘う看板が掲げられている。
リリィはその入り口を見上げながら興奮した声を上げた。
「わぁ!これ、めちゃくちゃ怖そうじゃない?」
光三郎もその様子を見上げ、満足げに微笑む。
「よし、これで準備は整った。あとは実際に挑戦者を迎えて反応を見てみるだけだ。」
リリィは拳を握りしめながら意気込むように言った。
「きっとみんなドキドキして、たくさんDPを稼いでくれるよ!このダンジョン、もっともっと面白くなりそう!」
光三郎が「恐怖の脱出ダンジョン」の完成を確認して数日後、ダンジョン内は新たなアトラクションへの期待と興奮に包まれていた。リリィは早速、温泉宿に滞在中の冒険者たちに声をかけて回る。
「ねえねえ、新しいアトラクションができたんだけど、試してみない?めっちゃ怖くて面白いらしいよ!」
リリィの呼びかけに、温泉宿に滞在中の冒険者たちは興味津々の表情を見せた。
「怖いアトラクション?面白そうだな。」
リリィは得意げに笑って答える。
「クリアしたらダンジョンポイント、略してDPがもらえるんだよ。それでレストランの特別メニューを頼んだり、温泉をアップグレードしたりできるの!」
冒険者たちは顔を見合わせて頷いた。
「それなら試してみる価値がありそうだな。」
「俺たちの腕なら簡単にクリアできるだろう。」
「DPっていうのも面白そうだし、稼いでみるか。」
こうして、数名の冒険者が「恐怖の脱出ダンジョン」に挑むことになった。暗闇に包まれた入り口を前に、彼らは少し緊張した面持ちで中に入っていく。
最初の部屋では、薄暗い空間に謎解きのヒントが隠されている。壁には奇妙な文字が浮かび上がり、床には足元をすくう仕掛けが施されている。
「これ、ただの暗号じゃないぞ。何か意味があるはずだ……。」
「おい、床が動いてる!早く解け!」
ヒヤヒヤしながらも暗号を解き明かすと、次の部屋への扉が開いた。
次の部屋に進むと、突然モンスターの影が壁に映し出される。不気味な音が響き渡り、足元にはまるで誰かが近づいてくるかのような振動が走る。
「くそっ、なんだこれ!?本物か?」
「大丈夫だ、冷静になれ!仕掛けの一部だろう。でもやたらリアルだな……。」
冒険者たちは警戒しながら進む。突然、仕掛けが作動してモンスターの幻影が猛然と襲いかかる演出に、彼らは思わず身を屈めた。
「びっくりさせやがって……でも、今のは本当に怖かったな。」
「確かに……心臓が止まりそうだったぞ。」
さらに進むと、細い道を渡らなければならない場面に遭遇。レーザーの光が道を遮り、光に当たれば床が一瞬で沈む仕組みになっている。
「これ、マジで難しいな……!」
「慎重に進めば大丈夫だ。落ちるなよ!」
光のタイミングを見計らって一歩ずつ進む彼らの姿は真剣そのもの。声をかけ合いながらなんとか全員で道を渡り切ることに成功する。
「こんなにハラハラする体験は初めてだ!」
「恐怖だけじゃなくて頭も使わされるとは……」
「報酬のDPも手に入ったし、やってよかった。」
冒険者たちの姿を見送ったリリィは、満足そうに光三郎に報告した。
「ねえ、ご主人様!みんなすっごく楽しそうだったよ!大成功なんじゃない?」
光三郎は頷きながらダンジョンコアのデータを確認していた。
「確かに反応は上々だな。DPも順調に生成されてる。この仕組み、かなり有望だ」
リリィは笑顔を浮かべながら言った。
「こんなに楽しんでくれるなんて、やってよかったよね!でも、もっといろいろ仕掛けを増やして、さらに盛り上げたらどうかな?」
光三郎は微笑みながら頷いた。
「その通りだ。もっといろんな仕掛けを追加して、リピーターを増やせるようにする。それに、DPの使い道もどんどん増やしていこう。」
リリィが意気込んで拳を握りしめる。
「次はもっとドキドキワクワクできる仕掛けを考えよう!ご主人様、私たちならもっとすごいの作れるよ!」
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