第30話:新住人とダンジョンの再構築

伯爵の送り込んだSランク冒険者4人組が、リリィの機転で制圧をやめ飯ダンジョンに滞在を決めた。一方で、帰還した光三郎は予想外の新住人に頭を抱えることに――。


ドラゴンダンジョンで守護者ルシアとの挨拶を終えた光三郎が、飯ダンジョンに戻ってきたのは翌日の昼だった。入口近くで待っていたリリィが、満面の笑みで駆け寄ってくる。


「ご主人様!お帰りなさい!」


「ただいま、リリィ。ダンジョンは大丈夫だったか?」


光三郎が安堵した様子で問いかけると、リリィの笑顔が少し引きつる。

「そ、それが……問題がありまして……」


「問題?」


リリィは申し訳なさそうに頭を下げながら、ダンジョンの奥へ案内する。そこには温泉宿の大広間でくつろぐ4人の女性冒険者がいた。


「誰だ、この人たち?」

光三郎が戸惑いながら問うと、剣士が立ち上がり、軽く頭を下げた。

「私たちは冒険者。伯爵の依頼でここを制圧しに来たんだけど、今はここに滞在することにしたわ」


「はぁ?滞在?」


弓使いが笑いながらティーカップを持ち上げる。

「そうよ。このダンジョン、紅茶もケーキも最高。それに温泉まであるんだから、わざわざ制圧するなんて馬鹿らしいでしょ?」


魔法使いが化粧品を手に取り、微笑む。

「それにこんな素晴らしいアイテムまであるのよ。ここを伯爵に渡すなんて無理な話」


シーフが椅子にもたれながら付け加えた。

「だから、ここに住むことに決めたのよ。あんたの許可もいらないわ」


光三郎は頭を抱えながらリリィに視線を向ける。

「リリィ、どういうことだよ!」


リリィは困った顔で答える。

「ご主人様がいない間に侵入してきて、核を壊されそうになったんですけど……あたしがお願いして、なんとかこうなったんです……」


剣士が腕を組みながら光三郎に言う。

「でも、温泉宿だけじゃ住むには不十分。早く私たち専用の家を作りなさい。それが条件よ」


光三郎は驚きながら問い返す。

「専用の家?そんな簡単に作れるわけないだろ!」


弓使いがにやりと笑いながら口を挟む。

「じゃあ、私たちはここでくつろぎながら待つだけよ。紅茶と温泉がある限り、文句は言わないわ」


魔法使いも微笑みながら頷く。

「それに、あの伯爵の依頼なんて聞く価値もないし。私たち、ここが気に入ったのよ」


シーフが椅子に腰掛けながら言い放つ。

「早くしないと、気が変わって伯爵の依頼を再開するかもよ?」


光三郎は深いため息をつきながら、アーヴィンに目配せする。

「どうする?この状況……」


アーヴィンは微笑みを浮かべながら答える。

「ご主人様、彼女たちを味方につけるのは悪くない選択です。彼女たちがいることで、ダンジョンの防衛力も上がりますし」


光三郎はしばらく考えた後、冒険者たちに向き直った。

「分かった。専用の家を作るから、しばらく待ってくれ。でも、俺の指示には従ってもらうぞ」


剣士が満足げに頷く。

「いいわ。その条件で手を打ちましょう」


その夜、光三郎は自室でリリィとアーヴィンとともに今後の計画を話し合っていた。


「居住区の建設には大量のDPが必要だな……でも、最近の収入だけじゃ足りないかもしれない」


アーヴィンが提案する。

「街道整備の件も進展していますし、商人を招き入れる準備を進めてはいかがでしょうか?交易が増えれば、DPやお金の獲得も加速するはずです」


リリィも興奮気味に手を挙げた。

「それに、冒険者さんたちがここにいるって宣伝したら、他の人も安心して来てくれるかも!」


光三郎は苦笑しながら頷く。

「確かにそうかもしれないな……とりあえず、明日から早速居住区の建設に取り掛かるか」

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