第26話:課題山積み、最強ダンジョンへの焦り
光三郎は居住区建設の進捗状況を確認していた。しかし、ダンジョン核の画面に表示された「DP不足」のメッセージに動揺を隠せなかった。
「ええっ!? まだ予定していた施設の半分も完成してないのに、もうDPが尽きたのか?」
途方に暮れる光三郎の元に、整備士ドワーフのグランが駆け込んでくる。
「ご主人様、大事な話がある!」
グランは勢いよく言いながら地図を広げた。
「ホールの壁やゴーレムの装甲がボロボロだ。このままじゃ次に備えられねぇ!それに居住区を作ってるんだったら、そこにもいくつか修繕が必要だ」
光三郎はさらに顔をしかめる。
「マジか……どれくらいDPがいる?」
グランは申し訳なさそうに指を一本立てる。
「ざっと30万DPだな」
「30万!? 居住区建設でほぼ使っちまったのに、そんな余裕ないぞ!」
さらにグランが話を続ける。
「それだけじゃねぇ。あんたのダンジョンで出してる酒が大人気でな、供給が全然追いついてねぇんだ。もっと量を増やしてくれ!」
光三郎は椅子に腰を下ろし、ため息をついた。
「補修も酒も……全部DPが必要じゃねぇか。どうすりゃいいんだよこれ」
そこに、アーヴィンが街道整備の交渉について報告にやってきた。
「ご主人様、ラノワール商人街との交渉は非常に順調でございます。商人たちは街道整備が交易を活発化させ、収益が増えると理解しております。近々正式な許可が下りるでしょう」
光三郎はその報告に安堵の表情を浮かべた。
「それは良かった!街道が整備されれば、もっと訪問者も増えるだろうし、ダンジョンへのアクセスも良くなるな」
アーヴィンが微笑みながら答える。
「その通りです。交易の活発化に伴い、商人たちの訪問が増え、酒や食事の需要もさらに高まることが予想されます」
しかし、冒険者ギルド出張所の設置に関しては厳しい現実が待っていた。
「一方で、冒険者ギルド本部からは出張所設置の許可が下りませんでした」
光三郎は驚いた様子で尋ねた。
「なんでだ?ここに出張所を作れば、ギルドにも利益が出ると思ったんだけど」
アーヴィンは慎重に説明を続けた。
「理由は、ダンジョンが本来『冒険者にとって敵対的存在』であるという認識が根強いからです。たとえ飯ダンジョンが異質な存在でも、前例がないためギルドとしては慎重になっているようです」
光三郎は頭を抱え、ため息をついた。
「まあ、普通のダンジョンなら冒険者に攻略されるのが当たり前だしな。でも、ここは違うって分かってもらうにはどうすればいいんだ?」
アーヴィンが提案する。
「ギルド本部に直接交渉を申し入れ、ダンジョンとの協力による具体的な利益を提示すれば、見解が変わる可能性はございます。ただし、少々時間を要するかと」
光三郎はその言葉に頷き、次の一手を考え始めた。
「そうか……まだ諦めるのは早いな。直接交渉も視野に入れて準備しよう」
そんな中、アーヴィンがふと思い出したように話を切り出す。
「ご主人様、ひとつ確認させていただきたいのですが……近隣の『ドラゴンダンジョン』にご挨拶はされましたか?」
「ドラゴンダンジョン?なんだそれ?」
光三郎の反応に、アーヴィンが驚いた表情を浮かべる。
「……まさか、まだご存知なかったとは。この地域における最強のダンジョンの一つであり、他のダンジョンマスターが最初に挨拶に行くべき相手です」
「え、そんな常識、知らなかった!」
アーヴィンはため息をつきながら説明を続ける。
「ダンジョン同士の暗黙のルールでございます。最強クラスのダンジョンに挨拶を済ませることで、無用な衝突を避けるのが通例です。ましてや、ドラゴンダンジョンはこの地の象徴とも言える存在。無視していると、敵意を持たれる可能性がございます」
光三郎は驚きと焦りを隠せず、声を荒げた。
「おいおい、そんなのいきなり行って大丈夫なのかよ?」
「礼儀正しく訪問すれば問題ありません。ただし、相手は規模も戦力も桁違いですので、慎重な準備が必要です」
光三郎は顔を覆いながら深く息を吐いた。
「分かった……ヤバいってことだけは理解した。でも、どうすればいいんだよ」
アーヴィンは冷静に提案する。
「まずは贈り物と礼儀作法を整え、正式な形で訪問する準備を整えましょう。それが最善策です」
光三郎は頭を抱えながらも、問題を一つずつ解決していく決意を固めた。
「伯爵との対立に、冒険者ギルドの説得も、居住区も、ドラゴンダンジョンへの挨拶も……どれも重要だけど、まずは挨拶しに行かなきゃか」
グランも頷きながら提案する。
「挨拶に行くなら、ついでに酒も持ってけよ」
光三郎は拳を握りしめ、気持ちを切り替えた。
「よし、まずは準備だ。最強のダンジョンに行って、ちゃんと挨拶を済ませよう!」
アーヴィンが笑みを浮かべながら応じる。
「お任せください、ご主人様。全力でサポートいたします」
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