人間って何
小林 綸
人間って何
彗星に乗って落ちてきた星の子と
友達になった
ある日、彼がこう尋ねた
「人間って何?」
「この惑星にはいろんな生命が生きている
彼らと人間の違いは何?」
僕は考えてみた
オオカミは火を怖がるけれど
人間は火を利用する
煮たり焼いたり炙ったり
暖をとったり灯りにしたり
羊はそこらの草を食むけれど
人間はきちんと線を引いた土地で 穀物を耕す
蓄えることを知っていて 冬も眠らない
蜻蛉は三日と生きられないが
人間の寿命は百年に近い
医療という魔法が生を延ばし続け
死は月よりも遠くなった
鳥は鳴き声で語らうけれど
人間は言葉で伝え合う
言葉で人と繋がって 分かり合って 助け合う
おかげで村は町と成り国と化し
文明はこんなにも成長を遂げた
けれども人間は
言葉で相手を殺すこともある
見えない銃で 見えない傷を与えてしまう
兄弟のように育つイヌとネコがいる
最高の親友になった猪と猿がいる
けれども人間は 肌の色や顔つきや生活様式の違いで
どちらが上か下かを決めたがる
自分と違う、それだけの理由で
簡単に相手を憎むことができる
神様の名前を理由にして
命を奪うことができる
シマウマは死ぬことから必死で逃げる
生き抜くことに疑問なんて感じない
けれども人間は
時々、生きることから逃げたくなる
自らの命を終わらせたいという欲求を持つ
これは人間にしか生じ得ない感情だという
黙って聞いていた星の子が
最後にこう尋ねた
「人間に産まれたことを
誇りに思うかい?」
僕は考えてみた
じっくり考えて、やがて答えた
「後悔する日もある」
人間って何 小林 綸 @Rin5884
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます