ダンジョン・サーヴァント

ニート大帝

プロローグ

突然現れた非日常

【本日を持ちましてダンジョン・サーヴァントのテストプレイを終了いたします。正式版リリースをお待ち下さい】


陽翔はると! ご飯できたから降りてきなさい!」


陽翔と呼ばれた少年は中学1年生になった記念に買ってもらったスマホで、とあるゲームを遊んでいた。そしてそのゲームは、突如陽翔のメールアドレスに送られてきたものだった。


「はーい! 今行くよ!」


(このゲームって今考えればウイルスメールだったかもしれないけど、楽しかったからいいか。よし! 正式版がリリースされたら課金しよう! あればだけど)


陽翔は送られてきたメールに釣られ、興味本位でそのゲームをダウンロードしてしまった。それは本来なら勧められたことではないが、陽翔は当時ネットリテラシーが低かったのでダウンロードしてしまった。そんな陽翔は母親に呼ばれたので、リビングに降りていった。


「陽翔。スマホでゲームもいいけど、あと3ヶ月で中2でしょ? そろそろマジメに勉強はしなさいよ」


「そうだぞ、陽翔。お父さんは中学時代勉強をしなかったから、高校受験大変だったんだからな」


「はいはい、分かっているよ。ちょうど今やっていたゲームが正式リリースまで1年くらいかかるから、それまではしっかりと勉強するよ」


「それまでじゃなくて、ずっとよ。もし次赤点でも取ったらスマホを没収するからね! もし先生から清川せいかわ君の成績が下がって困っていますって言われたら許さないわよ」


陽翔は母親に叱られながらも夕飯を食べ勧めた。そして部屋に戻ってベッドに横になりながらスマホでゲームアプリ、【ダンジョン・サーヴァント】を再度開くために、アプリの指紋認証を行った。


(このゲーム。作られたダンジョンをただクリアしていくっていう単純なゲームだけど、意外と面白かったな。まぁ俺は初期のガチャで当たりを引いたから良かっただけだけど)


陽翔のスマホにはダンジョン・サーヴァントで使った自分のドットのアバターのステータスが表示させるため、グリモアと呼ばれる本のアイコンをタップした。


ネーム:ハルト


ユニークスキル

創造・空間魔法・重力魔法・鑑定・転移


スキル

火魔法【ランク5】・水魔法【ランク5】・雷魔法【ランク5】・土魔法【ランク5】・風魔法【ランク5】・回復魔法【ランク5】・身体強化・剣術・格闘術


眷属できる眷属の一覧へ


(いやー本当に最初のスキルガチャで【創造】を引いて良かったよ。おかげでスキルはもちろん、ユニークスキルや眷属も作れるとは思わなかったぜ)


ダンジョン・サーヴァントは最初、アバターを設定した時点で最初にスキルガチャを引くことができる。そこでハルトはとても運良く、ユニークスキルを引くことができた。そしてその引いた創造のユニークスキルを使い、スキルやユニークスキルおよび眷属を多数創造した。


(通常ならなかなかドロップしないスキルオーブやサーヴァントカードがないと獲得できないのに、それがここまで自由自在だとは。なかなかぶっ壊れのユニークスキルだったな)


ダンジョン・サーヴァントは己だけでなく、眷属と呼ばれる相棒を最大二体までと共に戦うことができた。


(まさか眷属が魔物以外に、俺の適当に考えたドラゴンや漫画とかの神獣とかを眷属にできるとは思わなかったぜ。まぁおかげでゲームはヌルゲーだったけど)


陽翔は自分のアバターを確認してアプリを閉じた後、SNSでダンジョン・サーヴァントの評価について確認をした。するとそこには陽翔と同じように興味本位でダウンロードした人たちの評価が書かれていたが、ダンジョン・サーヴァントに対して悪い評価をするものばかりだった。


・ガチャゲーなのにリセマラできないのはおかしい!!!!!

・スキルやアイテムのドロップ率悪すぎ。正式版で修正求む。

・これさ、ダンジョンクリアできたやついるの?

・てかさ、サーヴァントって魔物だけ? 俺、ゴブリンしかいないんだけど?


(ま、そんな評価になるわな・・・)


陽翔の遊んだゲームであるダンジョン・サーヴァントは、今どき珍しくユーザーに不親切なゲームだった。定番であるリセマラはできず、自身を強化するためのアイテムもなかなかドロップしない。そのため、巷ではクソゲー認定をされていた。


(まぁテストプレイのダンジョン最終層である50階層にいるドラゴンもなかなか鬼畜だったからな。5つ頭を持ってそれぞれ基本属性の魔法を放ってくるってやばすぎだろ! 俺じゃなかったクリアできなかったぞ。でも最終的にソロで討伐できてよかった!)


陽翔はダンジョンのラスボスを思い出しながら、正規版リリースを楽しみにしながら眠りに付いた。そしてそこから約1年の時間が経ったある日の大晦日午前0時を超えて少しした頃、異変は起こった。


「うわぁぁぁぁ!」


「どうした!? 陽翔! 何があった!」


その日、新年早々に日本各地で地震が起こった。幸いその地震で人的な被害はなかったが、各地で不思議なことが起こっていた。そしてそれは陽翔にも起こっていた。


「な、なんだ・・・この白い本・・・父さん・・・分かる?」


「い、いや・・・なんだ・・・これは・・・」


年を越した後すぐに睡眠を取ろうとしてベッドで寝ていた陽翔の眼の前に、突如として光り輝きながら白い本が現れた。そして急に現れた本に驚いていると、陽翔の父親が部屋に入ってきたので、陽翔は父親にも本のことを訪ねたが明確な回答は得られなかった。


(なんなんだ? この本は? てか、本が空中に浮いているのってどういう原理?)


陽翔は一度冷静になり、白い本を見つめた。その本は世界の物理法則を無視して宙に浮いており、漂っていた。するとその本が急に陽翔目掛けて飛んできた。


「うわ!」


陽翔はとっさに腕で本から身体を守ろうとしたが、本は腕のガードの下を行って陽翔の腹に直撃した。


「ちょっ! え! はぁ?」


白い本が陽翔の腹に直撃すると、その本は陽翔の腹の中に吸い込まれていった。その瞬間、陽翔もその父も母も唖然として言葉を発することができなかった。そしてしばらくして父親が陽翔になんとか声をかけた。


「は、陽翔・・・お前・・・身体に変化はないか?」


「と、父さん・・・いや、見た感じなんともない。お腹に本がある感触もない。なんなんだ・・・」


陽翔はベッドから立ち上がり、身体を隅々まで確認をした。しかし身体に本が入るという謎の現象が起こっても特に身体自体に変化はなかった。そして陽翔の父親も陽翔の身体を確認したが、特に変化などは見られないのを確認した。


「警察に伝えた方がいいのか?」


「父さん、こんな変なことを警察に言っても相手にされないよ。逆に迷惑行為で捕まるかも」


「それもそうだな・・・ネットで調べてみるか・・・」


しかし陽翔と父親が調べてもネットには特に陽翔と同じような現象に陥った者はいなかった。そのため、陽翔と父親は身体に問題がないことから一旦様子を見ることを選んだ。そして何も解決しないまま一週間が過ぎた頃、いつものように朝食を食べながらテレビを見ていた陽翔に衝撃が走った。


「我が国の領土内のみにおいて、正体不明の地下構造施設、通称ダンジョンと故障する構造体が出現しました」


いつものようにテレビを見ていると、ニュース速報が流れて5分後に政府からの緊急放送がされるという連絡があった。そして5分後、テレビは総理大臣の緊急会見の様子が映し出され、開口一番にそう言った後、さらに信じられない言葉を続けた。


「突然のことで国民の皆様は信じられないでしょうが、これは政府が幾重にも確認を行って決まった正式発表です。デマではございません。証拠としてこちらを御覧ください」


総理はそのまま後ろのプロジェクターを下ろして、何かの映像を映し出した。その映像にはドーム型の洞窟の入口のようなものが映し出された。そして撮影者がその洞窟に入って暗闇を抜けると、そこには漫画やアニメでよく見る森のダンジョンのような空間が広がっており、さらに衝撃的な映像が流れた。


(えっ・・・・あれって・・・もしかしなくてもゴブリン!)


突如として洞窟の奥からファンタジー定番のモンスターであるゴブリンが姿を現した。そのため、撮影者とその同行者は一斉にゴブリンに向かって発砲をして倒していた。


幸いその映像にはモザイクがかかっていたが、ゴブリンが蜂の巣にされたことは確実であった。


「・・・今見てもらったのはCGではなく、現実です。こちらは都内某所に出現したドーム型のゲートをくぐった先にあったダンジョンの映像です」


総理が映像を止めると、記者会見場は一瞬にして静かになった。そしてそれは陽翔の家庭も同じで、父も母も映像を見て固まっていた。


「・・・マジ?」


小さく呟いた陽翔の声がリビングに響いていた。

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