第2話

「おはよー、タッキー」

「ああ、おはようございます」

「昨日はありがとねぇ! お陰で新しい楽しみを見つけちゃったよ〜!」

「いや、こっちこそ。まさかあんなにハマってくれるとは思ってなかったので、嬉しかったです」


 昨日の放課後、偶然にもゲームセンターで顔を合わせた俺とユキメさんは、なんやかんや2時間以上もビート乱舞を一緒にプレイしていた。

 初めはなんの気まぐれかと思ったものだが、意外にも彼女はビート乱舞にドハマリした。そうとなれば、俺も経験者として初心者の彼女へ真剣にアドバイスをせねばならない。アーケードゲーム界隈は衰退傾向にあるため、新規プレイヤーの獲得は貴重な機会なのだ。

 そんなわけで、ビート乱舞のイロハを彼女に伝えるうちに、俺たちは自然と仲良くなっていた。


「やっぱまだまだ初級の楽曲でも私には難しいねぇ。タッキーは、凄いよ! 上級でも楽々ハイスコア出しちゃうんだから!」

「まあ、俺は歴が長いですからね」

「へぇ、いつからやってるの?」

「中1から始めたんで、もう5年目です」

「すっご! どおりで上手いわけだ……」


 これまで長年ビート乱舞をやってきたが、基本ソロプレイヤーの俺は、人に褒められることに免疫がない。自分でも顔が赤くなっていると分かるほど照れてしまった。


「あっはは! 昨日もだけど、タッキー褒められるとすぐ赤くなるね! なんか可愛い!」

「男に可愛いは勘弁してください」

「え〜、良いじゃん。可愛いもんは可愛いよ」


 ニコニコと笑みを浮かべるユキメさん。俺からすれば彼女の方こそ可愛いと言われて然るべき存在だと思う。

 感情表現がストレートで、言葉に裏がない。初めこそ警戒してしまったが、俺はあっという間に彼女と話すことに心地よさを感じるようになっていた。


「それより、俺は今日も放課後にゲーセン行く予定なんですけど、良かったからユキメさんもどうです?」


 口にしてから『しまった』と思う。いくら彼女が俺と仲良くしてくれるとはいえ、相手はスクールカースト最上位の女子。俺からすれば、気軽に放課後の遊びに誘って良いような人じゃない。

 だが、そんな俺の心配は杞憂に終わる。


「マジ!? 行く行く! 今日こそレベル6クリアするぞ〜!」


 なんの躊躇いもなく俺の誘いに乗ってくれた彼女を見て、俺は呆気に取られてしまうのだった。

 

「え、良いんですか?」

「何が?」

「いや、俺と2人でゲーセンなんて……」

「……?? ゴメン、何の心配してるの?」

「いや、なんていうか……」

「あっ! 分かった! 他にも人を誘いたいってことね!」

「え?」

「オッケー! じゃあクラスの誰か誘ってみよーよ!」


 そして、俺はクラスの陽キャたちに囲まれ、ゲームセンターに行くことになるのだった。

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