ゲーセンでクラスメイトのギャルに絡まれた俺、何故か一緒にゲームをして普通に仲良くなった。

真嶋青

第1話

「あっれ〜? タッキーじゃん? 1人で何してんの?」


 ゲームセンターで音ゲーをプレイしていると、聞き覚えのある声に話しかけられた。しかし、今の俺は音ゲー『ビート乱舞』の最高難度楽曲をプレイ中。当然、話しかけられても反応する余裕などない。

 というか、音ゲー中に話しかけるのは普通にマナー違反だからやめていただきたい。

 まあ、俺に話しかけてきたギャルにそんなことを説いても、笑って流されるだけだろうが……。


「あっ! ズレた!」


 どうでもいいことに脳のメモリを割いたせいで、ノーツを叩くタイミングがズレた。一度ズレてしまえば、高速で流れる譜面に追いつくことはできず、プレイスコアは人にお見せするには恥ずかしい数値を叩き出す。

 

「くっ……途中までパーフェクトだったのに……」


 俺は悔しさでその場に項垂れた。すると、肩にポンッと手を置かれる。


「ちょいと、良い加減無視しないで欲しいんだけど」

「あ、まだ居たんすね……」


 どうやら彼女は俺がプレイを終えるまで大人しく待っていたらしい。とても不服そうな顔をしていた。


「まだ居たんすね、じゃないよ! こっちが話しかけてるのにガン無視キメちゃって。さすがに酷いんじゃない?」

「いや、ゲームの方に必死だったんで……。何か俺に用ですか、ユキメさん?」


 彼女の名前はユキメさん、どういう字でユキメと書くのかは知らない。ユキメというのが上の名前か下の名前かすら忘れてしまった。ただ、彼女は俺のクラスメイトで、クラスの誰からもユキメと呼ばれている。スクールカースト最上位、見た目通りのギャル。それが彼女について俺か知り得る全ての情報だ。

 あと付け加えることがあるとしたら、彼女はとても美人であるということくらいだろうか。

 俺のようなスクールカースト下位のゲームオタクが大した接点などあるはずもない。


「用は特にないよ。でもクラスメイトに偶然会ったら普通に声かけるっしょ」

「そんな普通は知らないですね……」

「え、タッキーは話しかけないタイプなんだ。珍しー」

 

 今更だが、タッキーというのは俺のことだ。滝沢という苗字からそう呼ばれている。


「で、タッキーは1人で何やってんの? なんかめっちゃ激しい動きしてたけど」 

「見ての通り、ビート乱舞をプレイ中ですよ」

「ビート……なんそれ?」

「今、俺たちの目の前にあるアーケードゲームですよ。ただの音ゲーです」

「アーケード? オトゲー?」


 ゲームセンターに足を運んでいる割に、そういう知識はゼロらしい。


「要は音楽のリズムに合わせてパネルを叩くゲームです」

「へぇ~〜〜」


 彼女は、良くわかっていなそうな顔で相槌を打った。もうこれで話すこともないだろうと思ったのだが、ユキメさんは突拍子もないことを言い出す。


「ねぇ、このゲームのやり方教えてよ」

「えっ?」

「ちょっと興味出てきた!」


 この日を境に、何故か俺は彼女と仲良くなった。

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