島の息づかいに抱かれて—
- ★★★ Excellent!!!
海の匂いと古い風に包まれた島で、ノルドが「誰かを救いたい」と願いながら一歩ずつ育っていく——その歩みが、とても丁寧に胸へ沁みてきます。薬草の香りや蜂蜜のやわらかな甘み、罠猟の張りつめた気配、小さな工夫が暮らしを変えていくよろこび。どの場面にも、手触りのある日常がやさしく灯っています。
厳しくも温かな母セラの教え、相棒ヴァルとの兄弟のような結びつき。島の経済や治安の息づかいも繊細に描かれ、読んでいるうちに、いつのまにか共同体の輪の中へ迎え入れられたような安心感が生まれます。これから二人と一匹がどんな海と森を越えていくのか
——静かな期待を抱きつつ、そっと見守りたくなる物語です。