第4話 それはそれとして

「……また爆発したな?」


 衝撃が加わると自爆する身体にでもなってしまったんだろうか。

 いやまあ、多分首のやつのせいなんだろうけど。ゲーム的に言うなら、ダメージ受けたら自爆とかそういうのか?

 でも、最初は首のやつ外そうとしただけだしな。

 いや、一番最初のが夢じゃないんだったら二回目か?


 まあ、細かいことはどうでもいいか。

 それはそれとして、俺はまた仰向けで目が覚めたわけで。さっきと、状況は同じなのだろうか?


「あっ!?」


 さっき聞いた声だ。後ろから聞こえた。

 振り向いて見るとポニーテールの女の子が俺を見て指をさしている。


「さっきのクソダサトレーナー不審者!」

「なっ!」


 確かに俺今トレーナーにスウェットだけどさ。

 中学から使ってるパジャマだからなんか両方迷彩模様ついてるけどさ。


「初対面の人間を不審者扱いするなんて失礼だぞ!」


 ……いや、不審者は大体初対面か。

 面識ある不審者とか嫌だし。


「鏡見てから言いなさいよ。クワガタの怪人かと思ったわ」

「えっ? 何で?」

「いや、それ……寝ぐせなの? だとしたら信じられないことになってるわよ」


 流石にそこまでひどくは……あ、ダメだ。

 頭上高くに髪の感触がある。しかも2ヶ所。


 とりあえず頭をわしゃわしゃーっとして寝癖だけ直す。

 髪質が硬いわけじゃないから、なんとなくでも直ってくれるのが俺の髪のいいところだ。


「……なんか悪い人じゃなさそうね」

「今のでそう思ってくれるんだ……」


 まあ随分フレンドリーな口調だった自信はあるけど。こちらの思いが伝わったようでなによりだ。


「いきなりぶんなぐっちゃったのに、殴り返してこないし」

「あっそうじゃん! 謝れよ!」

「今ので思い出したんだ……」


 なんか口調移ってるな。

 まあいいや。文字通り爆発して、一回沸点過ぎちゃってるし。


「さっきはごめんなさい。ところでここどこなの? 妙に薄暗くてじめじめしてるけど……」

「いや、俺もわからない」

「そう…………」

「…………」


 そして沈黙。十数秒の沈黙。

 今ので会話が終わってしまった。まあ初対面ならそんなもんか。

 聞いてる限り、この子も何も知らないっぽいし、一応情報共有でもしておくか……?


「あの、一応俺、ちょっとだけこの状況についてわかったことがあるんだけど」

「教えてもらいたいわ」


 食いついてくれた。やっぱり情報は欲しいよな。

 俺だってほしいもん。

 とは言え、どうやって説明したものか……


「まだ良くはわかってないんだけど、俺もあなたも、首になんかチョーカーみたいなのついてるだろ?」

「あっ本当だ。気持ち悪いわね……」

「おい待て! 触るな!」

「えっ? なんで?」


 女の子がチョーカーに触れようとしたので、慌てて止める。

 危うくもう一回爆風を拝むことになるところだった。

 多分だけど俺のと作りは一緒な気がするんだよな。


「少なくとも俺のは外そうとしたら爆発した」

「爆発!? ……じゃあなんであなた生きてるのよ」


 うーん良い質問だ。

 まるでこれから俺が話したい内容がわかっているかのようだ。

 若干失礼な人だとは思ったけど、聞き上手ではあるに違いない。


「それが……このチョーカーが爆発すると、なんかまた仰向けで寝てる状態に戻るんだよ」

「ほう……? それって、時間が巻き戻るみたいな感じ?」

「あー……?」


 言われてみれば確かにそうなのか……?

 たしかに、いちいち爆発で意識失って転移するとかより、よっぽどあり得そうな気がする。

 うん、ループものの、死んだら時間巻き戻るヤツって考えたら分かりやすいな。もしくは、ゲームで言うゲームオーバーからのリトライとか。


「なんか、昔のデスゲーム映画みたいだな……何故か死にはしないけど」

「多分それ、私も知ってるわ。爆弾だったかは覚えてないけど」


 うん、デスゲームか。

 そう考えるとすごいわかりやすいな。

 外そうとしたら爆発して、ほかの条件でも爆発するってわけだ。


「あっそうだ、多分だけどこれ、ダメージ受けても爆発するっぽいぞ?」

「ダメージ?」

「伝わらないか」


 デスゲーム映画を知っているならゲーム用語も伝わるかと思ったけどダメらしい。見た感じ、明らかにスポーツ女子っぽいしな。

 ジャージだし、筋肉もしっかりついてそうな体格だし、ゲームとかに縁がない暮らしをしてるんだろう。

 その辺配慮して説明するか。


「ほら、さっき顔面殴ってきただろ? その時にも爆発したから、痛み感じると爆発するのかなって」

「へぇ……なんかホントに……変な夢」


 そう言うと、何故か女の子は俺から目線を外す。

 ボケーっとした顔だ、そりゃそうか。

 俺だってこんな状況になったら夢を疑う。

 一回頬でもつねってみるかもしれないな。


「えいっ」


 実際、女の子は試してみたらしい。

 自分自身の頬をつねってみている。

 あれこれ説明するよりそっちのほうが早いだろう。

 これで痛かったら夢じゃないってわかってくれるだろうし。


 ……痛み?


『ギュイーン』

「ちょっとま」

『ドオォォンッ!!』

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1ダメ受けたら爆死するタイムリープダンジョン ビーデシオン @be-deshion

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