強豪演劇部の美少女が彼氏役に選んだのは帰宅部の俺だった

田中又雄

第1話 演劇部の彼女と帰宅部の俺

「...はぁ...テストだるい...明日地球が滅びないかな」と、机に突っ伏しながらつぶやくと、「その場合、滅びるのは学校だけでいいだろ。全世界の人間を巻き込むなよ」と、友達である大坂 良悟にツッコまれる。


「いやいや...俺は世界にいるテストだるい勢の代表として言ってるから。きっと世界にもおんなじ人がたくさんいるはずだ」

「だとしても世界が滅びろとは思ってないと思うがな」


 そんなどうでもいいやりとりをしながら、本日も昼休みとグダグダと過ごしている。


 すると、窓から見える反対側の廊下に目をやると、誰かが告白していた。


 男子のほうは...確か2年のイケメンサッカー部の部長だ。

ヤリチンと噂の男。確かに、イケメンでスポーツができればそりゃ抱かれたくもなるわな。

この前、同じ2年の美少女と喧嘩して別れたはずなのにもう次の女に手を出すとは...裏山けしからんな。


 そして、相手の女子は...1年の...隣のクラスの美少女、園村 椿だ。

学校1かわいい女の子ともいわれており、強豪演劇部のエースであり脚本家である。

彼女に関しては、可愛いだけじゃなくて、上品かつ体がエロいということも男子の中では共通認識であるが、しかし1年の2月9日現在まで、彼女が誰かと付き合ったという話は一度も聞いたことはない。


 しかし、いくら彼女とはいえ、あのイケメンであればワンチャンくらいはあるのであろうか...。

そう思っていたが、彼女はあまり表情を変えることなく、『ごめんなさい』という言っているのが何となく口の形で分かった。


 そのまま、去っていくイケメン部長。引き際は分かっているということだろう。

だが、ヤリチンイケメン部長もダメとなると、うちの高校で彼女のお眼鏡にかなう人間はいないのだろう。


 そう思っていると、こちらの視線に気づいたのか、ちらっとこっちを見そうな雰囲気をしていたのですぐに目をそらす。


 人の告白を覗き見するのはよくないからな。うん。俺は何も見ていない。


 そんなことを思いながら、その日もいつも通り何も起こらず終わるはずだった。


 ◇帰りのHR


「ほんじゃ、先生からは以上。じゃあ、今日のHRも終わり~。そんじゃ、号令よろ~」と、担任の高橋先生の緩い挨拶とともに、本日も終わりを告げる。


 本来であれば帰宅部の俺はさっさと家に帰ることが部の方針であるのだが、今日は掃除当番ということもあり、同じ班の数人と特に話すこともなく、掃除を進める。


 20分程度で掃除を終わらせ、さて俺も帰るかと、教室の扉を出ようとしたところで、人とぶつかりそうになり咄嗟によける。


「あっ、す、すみません」というと、「いいえ。大丈夫よ」と優しい声でそう言った。


 そこに居たのは園村 椿だった。


 意外な人物に驚きの感情を抱きつつも、さっさとこの場を去ろうと、一礼をして歩き出そうとすると、「ちょっと、あなた」と呼び止められる。


 首だけ振り返ると、「お名前、なんていうの?」と質問される。


「...え?俺ですか?...酒井...礼...ですけど」

「そう...。礼くんね。ちょっとこの後時間あるかしら?」と、まさかのお呼び出しを食らうのであった。


 もちろん、美少女からのお誘いを断れるわけもなく、そのままついていったのだが...連れていかれたのは演劇部の部室であった。

そう...俺は美人局にあったのだ。


 うちの高校の演劇部は全国常連であり、今年度は確か準優勝している。

そのため、部員数もかなり多く、この部に入るためにこの高校を選んだという人も少なくなく、個性的なメンバーが集まっているイメージだ。


 そして、脚本と主人公を担当しつつこの曲者メンバーを上手くまとめ、準優勝に導いた人こそ、園村さんだった。


 そんな彼女に誘惑され、大勢の前に立たされた俺なのだが...。

ナニコレ?どういう状況?帰りたいんだけど?


「おいおい、園村...まさか...言っていたやつってこいつのことか?」と、ネクタイの色からおそらく2年生だと思われる人が恐る恐る質問する。


「はい、そうです。この人こそ、私が探し求めていた人材です」

「...人材?」

「改めて紹介するわ。この子は酒井礼くん。私と同じ1年で...そして来年度の大会における私の彼氏役を演じる子よ」

「...はい?」


 そんな理解できない状況に困惑していると、「もしこの役を受けてくれるなら、私はあなたの本当の彼女になってあげる」と、さらに理解できないことを突き付けるのであった。

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強豪演劇部の美少女が彼氏役に選んだのは帰宅部の俺だった 田中又雄 @tanakamatao01

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