序章③:アレッサンドラとジャンカルロの出会い

王家の最後の姫であるアレッサンドラは、崩壊した王宮から命からがら逃げ延びた。家族も侍女たちも城もすべて失い、彼女は悲しみに打ちひしがれていたが、それでも生きるためには前に進むしかなかった。華やかなドレスは泥と埃にまみれ、腕や足は傷だらけだった。


幾日も彷徨ったアレッサンドラが最後に辿り着いたのは、王都の影である裏社会だった。そこは荒廃し、無法者たちが跋扈する危険な場所だった。本来なら生涯足を踏み入れることなどなかったであろうその場所で、アレッサンドラは裏路地に身を隠して必死に生き延びた。


そんな彼女の前に現れたのが、若き日のジャンカルロだった。鋭い眼光と冷静な佇まいを持つ彼は、裏社会で頭角を現し始めていた。ジャンカルロは偶然出会ったアレッサンドラを助け、自分の隠れ家に匿うことにした。


二人は次第に心を通わせていった。アレッサンドラの芯の強さと優しさに惹かれたジャンカルロは、彼女を守りたいという強い思いを抱くようになる。一方、アレッサンドラもジャンカルロの内に秘めた優しさに心を動かされていった。


しかし、ジャンカルロは犯罪組織「シャドウベイン」の闇に深く関わっており、彼女を凶悪な犯罪の世界に巻き込みたくないと考えた。アレッサンドラが危険に晒され、命を落とすことを恐れたジャンカルロは、苦渋の決断の末に彼女と別れる道を選んだ。


アレッサンドラは彼の真意を察しつつも、胸に秘めた想いを伝えることなくその場を去った。

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