前門の女装男子、後門の女装男子(あらすじ抜粋)

　姉がプレイした乙女ゲームに転生したアランサス。第一王子、乙女ゲームの攻略対象の一人という恵まれたポジションにうまれ、ヒロインと恋愛が待っているかと思いきや、前世の知識といろいろ違う。
　まず悪役令嬢ポジションの婚約者は、俺様男装女子。
　待ち望んでいたヒロインは筋肉隆々女装男子。
　おかしいでしょと絶望するアランサスの前に魔物まで現れる。
　アランサスは無事に悪役令嬢♂と婚約破棄できるのか！？

　というのがこの作品のあらすじです。これだけでも伝わるコメディ具合。第一章は笑いながら読みました。

　女装男子というキーワード。これだけでも気になる方いると思います。
　しかもこの作品、女装が似合う正当派女装男子と、女装が似合わないニッチ系女装男子、両方取りそろえております。手厚い。
　俺様系と天然系とキャラの方向性の違いもバッチリです。これだけで救える命があります。

　そんな女装男子たちに囲まれた、哀れで愉快な主人公アランサスは、ちょっと頼りない感じの主人公です。
　個人的には女装男子達、敵に比べると攻撃力がなく、劣勢に追い込まれがちなのがいい味だしてるなと感じました。劣勢でも諦めず、知恵をしぼって勝利の未知を探す姿勢は、勝てるのかというハラハラ感と勝ってくれ！という没入感を与えてくれました。

　ヒロイン不在によるドタバタコメディかと思いきや、ストーリーが進むにつれて転生の謎がわかってきます。アランサスのハッピーエンドを邪魔する敵の正体が分かってからは、一気に物語が動き出し、後半のバトルは迫力満点です。
　敵ポジションのキャラクターも憎めない。主人公サイドよりも敵ポジの方がはまりやすいという私のような人間にオススメです。
　敵側にも事情があって、突き通したい信念がある。それが分かるエピソードと展開に胸が熱くなりました。

　頼りない系転生王子が仲間と共にハッピーエンドをつかみ取るお話、気になった方はぜひ読んでください。