第15話

絵筆を動かす時の真剣な眼差し。

それがフッと途切れる時に見せる優しい表情。

壮真は美術室で絵を描いている優希を廊下から見ていた。

いつの間にか部活の前に美術室を覗くのが日課になっていた。

他の子が気付いて騒ぎ出す。

「あ、宮田君!何か用?」

「いや、通っただけ」

壮真はそのまま廊下の向こうに歩いて行った。


母親の祐里には同じ目の見えない親友がいる。

時々日曜日にはその女性、葛西梨香子と会うために電車に乗る。

駅は危ないので壮真が付き添いで行った。

葛西夫人にも娘が付き添いで付いて来ている。

葛西美歩だ。

現在中学3年で壮真よりも一つ下である。

喫茶店で母親同士が話をしている間、隣にいても仕方ないので壮真と美歩は別の席にいた。

「そうか、来年、青楓受けるのか」

「うん」

「部活は……やっぱりバスケ部?」

「そう。一番好きだから」

「そうか」

「壮ちゃんは芸能界に入るの?」

「そんな事出来るわけないだろう?」

「そうだよね」

美歩は紅茶を飲んだ。

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