第14話

歩実は図書館に来ていた。

探しているのは手話の本である。

あんな少しの手話で喜んでいた。

まあ、指導係としては手話出来ないとね……

歩実は手話の本を手に取った。

そして机と椅子が並んでいる方に向かった。

そこに心と颯がいたのである。

「心君⁈」

"黒木さん!"

見れば机の上には料理の本が一杯あった。

「熱心だね」


歩実は手話の本を持っていた。

"黒木さん、それ…… "

心はノートに書いた。

「ほら、この間耳が不自由なお客さん来たでしょ。だから手話出来ないとね」

"…… "

"紹介するよ。レストラン、エレールで俺の指導をしてくれてる黒木さん。彼は同じ十六夜の学生で平松君"

「宜しくー。私も十六夜の生徒だったのよ」

「そうなんですか。2年の時は何処だったんですか?」

「西洋料理コースよ」

「俺も西洋料理コースに行くつもりなんです」

「そう」

歩実はそう言うと心を見た。

「じゃあ、頑張ってね」

歩実はそのまま行ってしまった。

その後で颯が興奮したように言った。

「スッゴイ可愛い!いいなあ、心はあんな可愛い人に毎日指導されてるんだもんな」

"まあな…… "

心は頭を掻いている。

「お前、彼女に気がある?」

颯が探るように心の顔を見る。

"俺には彼女がいるんだ"

「けど大分と横浜の遠恋だろ?」

"毎日メールしてるし"

「全然甘い!遠くの彼女より、近くの友達ってな」

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